IT企業の上場中止を 人権団体が訴える「悪用」疑惑

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渡辺淳基 田内康介
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 日本企業傘下のイスラエル企業が計画する米株式市場への上場に対し、米英仏など計18カ国以上に拠点を置く28の国際人権団体などが、人権上の懸念を理由に上場手続きの中止を求める公開書簡を出した。スマートフォンから個人情報を抜き出す同社の製品は、香港やミャンマーなど一部の輸出先で反体制派の弾圧などに悪用されているとの指摘がある。人権問題で企業に社会的責任を求める声が強まっている。

 この会社はイスラエルのIT企業「セレブライト」。デジタルフォレンジック(電子鑑識)分野のトップ企業だ。スマートフォンのロックを解除し、暗号化された情報を取り出す機器を手がけ、世界140カ国の捜査機関などに提供している。日本語版もある。

 同社は2007年に日本の電子機器メーカー「サン電子」(ジャスダック上場、愛知県)に買収され子会社になった。20年度はグループの売上高の7割超を稼ぐ中核だ。

 セレブライトは今年4月、事業拡大のため米ナスダック市場に株式を上場する方針を表明。事業をしない「空箱会社」を投資ファンドなどが上場させ、後から事業会社と合併する「SPAC」と呼ばれる手法を使う。当初は6月中の手続き完了をめざしていたが、遅れている。理由ははっきりしないが、審査に時間がかかっているとみられる。日本企業の子会社として、SPACでの上場第1号になる可能性がある。

 これに対し、電子フロンティア財団(米)や国際人権連盟(仏)など、28の有力な市民団体や人権団体が今月13日、米証券当局やナスダック市場、投資家に対し、セレブライトが人権侵害を防ぐための具体策を講じるまで上場手続きの延期や中止を求める公開書簡を出した。同社の製品が「抑圧的な政府に販売され、記者や人権活動家、反体制派、少数派の拘束などを可能にしている」と指摘している。

 米国のトム・マリノウスキ下院議員も6月、同じ趣旨の公開書簡を米証券当局などに提出した。人権問題への対応を後回しにしているとセレブライト社を批判。同社が取引基準を明確化するまで上場手続きを延期することなどを求めた。

 同社のロック解除技術は犯罪捜査に役立つ一方、一部の国で政治的な弾圧や、令状に基づかない不透明な刑事手続きに悪用されているとの指摘が相次いでいる。

ミャンマーで、香港で…市民らへの弾圧に悪用の指摘

 米紙ニューヨーク・タイムズ

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