記者サロン「南極から地球がみえる」 理想込められた地

中山由美
【動画】記者サロン「南極から地球がみえる」第1回
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 ペンギンやアザラシたちが暮らし、オーロラが夜空に揺らめく雪と氷の世界。そして地球と宇宙の不思議を探る最前線の地・南極をテーマに、記者サロン「南極から地球がみえる」が始まりました。南極から2月に帰国し、本紙東京都内版と朝日新聞デジタルで「ホワイトメール」を連載する社会部の中山由美記者が担当します。シリーズ初回は6月18日、橋田元・国立極地研究所教授を招いて、現地の映像を見ながら、南極を語り合いました。

 日本の南極観測隊は1956年11月に1次隊が出発し、今は62次隊が昭和基地で越冬中だ。

 60年以上続く南極観測。草創期に比べると、今は注目度が低い。樺太犬のタロとジロの映画を思い出す人もいるだろうが、史実は意外に知られていない。どんな観測をしているか、南極と北極は何が違うのか。まずは映像を楽しんでもらいながら、南極の魅力や地球の不思議に触れ、地球環境に思いをはせてもらいたい。そんな思いで記者サロンの「南極から地球がみえる」シリーズは始まった。

 初回のゲストは、国立極地研究所南極観測センター副センター長の橋田さん。二酸化炭素の研究観測で何度も南極へ赴いており、62次隊長兼夏隊長を務めた。私は61次隊で越冬し、橋田さんの62次夏隊とともに今年2月に帰国した。

 記者サロン序盤では、越冬中に撮ったペンギンや昭和基地の動画を紹介。目の前が白く見えなくなるブリザードの脅威、太陽が昇らない極夜の空など、動画で臨場感を伝えられるのが、オンラインサロンの長所だ。

「南極から地球がみえる」シリーズ第2回「南極の空、世界の空へ」 21日(水)午後4時~ ふだん何げなく見上げる空。そこには多彩な表情があるのを見過ごしていませんか?雲、光、空の色……。二度と同じものは見られない美しさにふれながら、その不思議を解き明かすとっておきのお話を「空の探検家」武田康男さんにうかがいます。「世界一空が美しい大陸 南極の図鑑」の著者として知られる武田さんは南極で越冬し、空や雪、氷の美しい映像を撮影されてきました。世界や日本各地の貴重な写真や動画も紹介いただきます。夏休みのお子さんとご一緒にお楽しみ下さい。聞き手は南極・北極専門記者の社会部・中山由美です。 申し込みはサイト(https://ciy.digital.asahi.com/ciy/11005015別ウインドウで開きます)から。

 橋田さんは様々な観測を紹介し、「地球全体を知りたい時に南極、昭和基地が重要」と話した。日本の37倍の大きさの南極大陸で「氷の量が変わることでごくわずかに動く大陸の動きも精度よくとらえる」と、広大な世界の中での貴重な観測拠点だ。上空オゾンの激減をとらえたことがオゾンホール発見、そしてフロンガス禁止へ世界が動くきっかけとなった例、隕石(いんせき)探査などの成果も紹介した。

 その後、話題は今年発効60年の節目を迎えた「南極条約」へ。南極はどこの国でもなく、人類が協力して平和と自然環境を守るという「理想」の精神が込められている。紛争もなく、各国が協力し合う体制を築いた条約だ。日本や米国など12カ国が最初に署名し、今は54カ国に広がった。

 橋田さんは各国研究者と飛行機で南極に入り、外国基地ですしを作った話を披露し「厳しい環境の中では自分たちだけではできない」と語りかけた。私も「国に関係なく、仲間として自然に協力し合えることを実感した」とベルギーの研究者らと共同で隕石(いんせき)探査をした経験を振り返った。

 1998年には生物保護、鉱物資源開発の禁止など「環境保護に関する南極条約議定書」も発効した。そのため、観測隊員も環境と生態系を守るため、「南極で活動する際には許可証が必要だ」と橋田さんは解説した。

 1100人を超える参加者からの質問で多かったのは、新型コロナウイルスに関することだ。私たち61次隊は初めての感染者が確認される前の2019年11月に日本を出発したため、コロナとは無縁の南極生活だった。感染拡大後に出発した62次隊は計画の大幅変更を迫られた。

 感染予防で出発の式典も見送りもなく、神奈川県横須賀市の岸壁から小さな船に乗り、沖で観測船「しらせ」へ乗り込む。紹介した動画は前代未聞の光景だった。赤道を越えて氷海、そして昭和基地へ、観測史上初めて「無寄港無補給」で南極を往復した。ウイルスを持ち込まず、観測を途切れさせないための努力だ。

 「南極観測は新しい知見が得られるだけではなく、人間の将来にとって大切」と橋田さんは語った。温暖化で海や大気が変化、南極大陸の氷や地球の海水面も変わり、私たちの暮らしにも影響は及ぶ。地球の過去から現在、未来がみえてくる場所、それが南極だ。

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 次回からは1テーマずつ、空、動物、越冬隊の暮らし、観測の最前線などを紹介していく予定だ。写真と動画、そして南極で活躍した人たちの体験談で「南極の雰囲気」を味わいながら、気楽に楽しめるサロンをお送りしたい。中山由美

 はしだ・げん 国立極地研究所南極観測センター副センター長。専門は極域海洋生物地球化学。南極観測隊歴は39次越冬隊、43次夏隊、44次越冬隊、52次夏隊、53次夏隊、54次越冬隊長。62次隊長兼夏隊長を務め、今年2月に帰国。ベルギー基地やノルウェー基地も訪問し、南極での任務は計8回を数える。

 なかやま・ゆみ 南極・北極専門記者。45次南極観測隊で越冬、南極大陸内陸・標高3810メートルのドームふじ基地で氷床掘削を取材、51次夏隊ではセールロンダーネ山地で隕石(いんせき)探査に参加。61次越冬隊に同行し、今年2月に帰国した。グリーンランドなど北極へは7回赴いている。著書に「北極と南極のへぇ~ くらべてわかる地球のこと」(学研)など。

参加者の感想

 40代・女性「終了後、息子は南極条約について調べて日誌に書いていました。国を超えて交流したり助け合ったりしていると知り、地球全部が南極を目指せば平和になるのにと家族で話すことができました」

 40代・女性「パネルや映像をふんだんに使って分かりやすく、ワクワクしながら拝見しました。新聞記事だけではわからない取材の様子がよくわかりました」

 60代・男性「日頃のニュースでは知れない情報を知ることができ、ドキュメンタリー番組とは異なり体験者のトークで番組が進むので、楽しんで聞くことができました」

 40代・女性「自然に話に引き込まれた。美しい写真や映像もとてもよかった。実際に越冬した南極に詳しい方の話が聞けて、インターネットの検索では出てこない話も聞けた」

 50代・男性「臨場感と過酷さがすごく感じられた。圧倒的な大自然の力を前に、国境がなく皆で協力している南極は、世界平和に関して究極の場所と感じた」

 70代以上・男性「記事でもドキュメンタリー番組でもない。自分好みのスタイルの報道だった。知らない南極のことを知るいい機会で、素晴らしい映像に感動した」

 50代・男性「南極大陸の生の姿を実感できた気がします。61次隊はコロナに無縁であったとは、映画『復活の日』を思い出しました」

 70代以上・女性「コロナ禍の中、講演会に行かなくても家で聞けるのはとてもありがたいです。むしろ身近に感じられて思わず相づちを打っていました」

 60代・女性「地球温暖化防止のために何ができるのか、まだ汚染や商業化がされていない南極から考えることが大切だと思うきっかけになった」

 70代以上・男性「見終わった後、自然に拍手してしまいました。充実感は最高。南極条例のもと多くの国が共同で仕事している。我々人間はこういう形で共同で仕事できるのですよね」

 「南極から地球がみえる」シリーズ第2回「南極の空、世界の空へ」 21日(水)午後4時~ ふだん何げなく見上げる空。そこには多彩な表情があるのを見過ごしていませんか?雲、光、空の色……。二度と同じものは見られない美しさにふれながら、その不思議を解き明かすとっておきのお話を「空の探検家」武田康男さんにうかがいます。「世界一空が美しい大陸 南極の図鑑」の著者として知られる武田さんは南極で越冬し、空や雪、氷の美しい映像を撮影されてきました。世界や日本各地の貴重な写真や動画も紹介いただきます。夏休みのお子さんとご一緒にお楽しみ下さい。聞き手は南極・北極専門記者の社会部・中山由美です。

 申し込みはサイト(https://ciy.digital.asahi.com/ciy/11005015別ウインドウで開きます)またはQRコードから。