喜べないヤリイカ豊漁 コロナ禍で需要減、支援の動きも

伊藤隆太郎
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 日本海のヤリイカ漁が豊漁だ。一昨年からの不漁を乗り越える勢いだが、漁師たちの顔色はさえない。新型コロナ禍で飲食店の需要が減り、価格が下がっているためだ。「苦境を救いたい」と、販路づくりに立ち上がった旅館もある。

 「厳しさから一転し、2月下旬から記録的な大豊漁なのに……」。宗像漁業協同組合(福岡県宗像市)の桑村勝士組合長の表情は厳しい。旅館や飲食店に生きたまま届ける新鮮さが自慢のヤリイカが、「壊滅的なダメージを受けている」という。

 桑村さんによると、ヤリイカ漁のピークは春と秋の2回。春季で比べると、2019年は不漁のために1キロ当たり2千円以上に値上がりし、翌20年も2500円前後が続いた。21年から一転して豊漁になるなか、コロナ禍で需要が低迷し、1600~1800円に下がったという。

 例年なら旅館や料理店へ出荷される高級品が、スーパーなどに流れ、価格の下落に拍車をかけた。今年は1月中旬と5月上旬にコロナ感染が拡大。その谷間の4月ごろは2千円以上に持ち直していたことから、「影響は明らか」と桑村さん。

 卸し先の旅館には支援に動き出すところもある。

 イカの生きづくりを店の看板メニューにする宗像市の旅館「御宿はなわらび」の小林大二さん(33)は、卸値を上回る値段でヤリイカを仕入れて料理人が素早くさばき、すぐに瞬間冷凍し、真空で包装してネットで通販する試みを始めた。

 小林さんは「漁港までの近さ、料理人の腕、最新の冷凍技術。この三つが合体し、料理店に負けない新鮮さを保っている」と、胸を張る。経営が厳しいなか、マイナス60度で急速冷凍する専用冷蔵庫に投資した。

 7月20日まで、大手クラウドファンディングのサイト経由で購入者を募っている。その後は未定だが、小林さんは「販路を広げたい」と言う。

 昨年までの不漁はヤリイカに限らず、スルメイカやケンサキイカなど全般に広がり、全国規模だった。国立研究開発法人「水産研究・教育機構」によると、海水温の上昇などでイカの孵化(ふか)や生育が影響を受けたためだという。今年は回復傾向にあるものの、日本海の水温は今年も「平年よりかなり高め」と予測しており、予断を許さない。(伊藤隆太郎)