兄の帽子かぶった女子選手 最初で最後の夏「悔いない」

抜井規泰
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(14日 高校野球東東京大会 板橋12-1葛西工)

 選手17人で戦った葛西工。18~20の背番号が空いている。「私が欲しいんだけど、仕方ないです。みんなを応援します」。記録員としてベンチ入りした石川葉月(3年)は試合前、笑顔でそう言った。全国でも珍しい女子選手だが、男子に交じってのプレーには危険が伴う。規定で女子は公式戦に出場できない。

 兄太一さん(19)の背中を追いかけ、幼稚園の年長で野球を始め、兄と同じ葛西工に進学。しかし、野球部は1年の夏に部員不足で休部に。昨春、児島諒監督のもとで再始動したが、1年放置していたグラウンドは雑草に覆われ、大量のごみが散乱していた。

 草刈りだけで部活が終わる。最初はそんな毎日だった。石川は、練習試合でのレギュラーを目標に、グラウンドに汗を染み込ませてきた。

 1カ月ほど前、石川は児島監督に頼み込んだ。「このままでは終われません。1試合だけ私にください」。6月20日、石川のための「卒業試合」が組まれた。9番・二塁手で先発。得点につながる送りバントが、「球児」としての最後の思い出になった。

 迎えた夏の舞台。四球や失策が重なり、長打を浴び、五回コールドで終わった。「でも、ベンチで一生懸命声を出しました。悔しいけれど、悔いはありません」

 昨夏も部員が足りず、チームは独自大会に出ていないため、石川にとって最初で最後の夏だった。兄のおさがりの、汗がいっぱい染み込んだ帽子を脱いだ。(抜井規泰)