「悪ガキ」だった自分 先輩に教わった本当のかっこよさ

寺島笑花
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 高川学園(山口県防府市)の右翼手、源卓君(3年)は入部当初、「悪ガキ」だった。授業中に騒いだり、提出物を忘れたり。そのたびに当時監督で現コーチの西岡大輔さん(27)から怒られた。グラウンドに入れてもらえないことが日常茶飯事。道路脇の草むしりやごみ拾いを指示されていた。

 大阪府出身。父は大の野球ファンで、「卓」という名前は元プロ野球巨人の江川卓投手にちなんで名付けられた。小学1年から野球を始め、小4で硬式チームに。中学生になると甲子園球場で野球を観戦するようになり、自然と「自分も出たい」と思うようになった。

 「野球は本気」(西岡コーチ)だが、小さいころからやんちゃ。通っていた私立中学は2年で退学になり、公立に編入。親元を離れて野球に打ち込もうと覚悟を決めて、寮がある高川学園に入った。なのに、気持ちと行動が伴わない。「面白かったらいいやろ」。自分が悪いことは分かっていた。だが、気持ちが折れかけていた。

 そんな時、声をかけ続けてくれたのが今春卒業した徳原壮一さんだった。「自分を見つめる時間を持て」。練習が終わると、徳原さんだけはいつも立ち止まってティーバッティングや素振りに誘ってくれた。授業や宿題への向き合い方、野球以外の日常生活の意識が少しずつ変わった。

 徳原さんは3年生になる直前に左足を疲労骨折した。昨年の最後の夏は記録員としてベンチに入ることを選んだ。

 高川学園は昨年の独自大会で優勝。源君はスタンドから見守った。試合後、部員から胴上げされる徳原さんの姿があった。甲子園という目標がなくなっても、ひたむきに練習を続けて優勝した先輩、そして学生コーチとして最後までやり遂げた徳原さんがものすごくかっこよかった。

 3年生の引退後、源君は初めてベンチ入りメンバーに選ばれた。秋の県大会では1年生大会以来、久しぶりの打席に立ち、「緊張で固まった」。その後はより多くのことを吸収しようと、練習中もメモ帳を持ち歩き、すぐに書き留めるようになった。副主将に任命され、自分のことで精いっぱいな時でもチームを鼓舞する言葉を探すようになった。

 「今でも当時みたいな(やんちゃな)部分は持っていると思います。でも、そこが良さでもある。チームが苦しいときこそ、彼が超えてくれないかなと期待してしまう」と、松本祐一郎・現監督(33)は話す。

 「(徳原)壮一さんみたいに、我慢して受け止めて頑張れるのが本当のかっこよさだといまは思う。いろんな人に迷惑をかけた分、活躍する姿を見せたい。まだまだできることがあるし、今からでも遅くない」。昨夏、優勝しても行けなかった甲子園。徳原さんの代わりに、その舞台に立ちたい。(寺島笑花)

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