飯塚幸三被告に禁錮7年を求刑 池袋暴走事故で検察側

村上友里、大山稜、新屋絵理
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 東京・池袋で2019年4月に車が暴走して、母子が死亡し9人が重軽傷を負った事故の公判が15日午後、東京地裁であった。検察側は、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(90)に対し「アクセルを踏み続けたことが事故の原因だ」として、同罪の法定刑の上限にあたる禁錮7年を求刑した。

「アクセル踏んでない」 「車に異常」 被告側は無罪主張

 飯塚被告は事故から約10カ月後の20年2月、在宅のまま起訴された。同年10月の初公判で飯塚被告は、起訴内容を否認して無罪を主張。「アクセルを踏み続けたことはないと記憶している」「車に何らかの異常が生じ暴走した」と述べた。

 検察側は冒頭陳述で、飯塚被告がブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み続けた過失によって事故が起きたと指摘した。

 根拠として①加速機能やブレーキを制御するセンサーなどの電気系統を事故後に調べても異常を示す故障記録はなかった②ブレーキランプが事故当時点灯していない―などを挙げた。また、飯塚被告の車は08年に新車で購入しており、「事故1カ月前の点検でも不具合は見つかっていない」とも述べた。

 事故で亡くなった母子は、自転車で横断歩道を渡っていた松永真菜さん(当時31)と長女の莉子ちゃん(同3)。真菜さんの夫の拓也さん(34)は事故5日後に匿名で会見し、「運転に不安がある人は運転しない選択肢を考えて」と訴えた。

 交通事故をなくしたいとの思いから、飯塚被告への厳罰を求める署名約39万筆を集めて東京地検に提出。その後に実名を公表し、飯塚被告に損害賠償を求める民事訴訟も起こした。

 また、交通事故被害者の遺族らでつくる一般社団法人「関東交通犯罪遺族の会(あいの会)」に所属して、被害者側が裁判を傍聴するなどの際に会社を特別に休める制度の新設を政府に求めている。

 今年6月21日の公判では、拓也さんら遺族が被害者参加制度を使って飯塚被告に直接質問した。「命を奪った事実を真剣に考えたか」とただすと、飯塚被告は「私にも子がおり、妻と子が突然亡くなったと考えると本当につらい思いをしたと思う」。「主張に無理があると思わないか」との問いかけには、「車を止められなかったことは悔やんでいる」と述べるにとどめた。

 拓也さんの自宅は、3人で暮らしていたときのままだ。壁に貼られた莉子ちゃんの絵、本棚の絵本、リビングに置いたおもちゃのキッチンセット……。寝室の片隅には、事故時に妻と娘が着ていた服が袋に入ったまま置いてある。

 事故現場には、いまも足を運ぶ。「事故が起きた一瞬とは釣り合わない、長い苦しみを感じています」(村上友里、大山稜、新屋絵理)