NASAそっくり?中国の火星探査車 無理せず実績優先

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上海=井上亮 聞き手・小川詩織
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 中国が5月、火星に探査機を着陸させることに成功した。さらに、探査車を地表で活動させることも達成。着陸成功は旧ソ連と米国に続く3カ国目、探査車の活動は米国に続く2カ国目という難関を一気呵成(かせい)にクリアし、宇宙技術の高さを世界に示した。躍進の鍵は何か。

 赤茶けた広大な大地、でこぼことした地表、その先に広がる地平線――。

 中国の国家宇宙局は今月9日、新たな火星地表の画像を公開した。撮影したのは、探査車「祝融」だ。神話の火の神にちなんで名付けられた。

 太陽光パネルで発電し、六つの車輪で走行する。地表や地中の構造を調べるレーダーや気象観測装置などを搭載。岩や砂丘といった特殊な地形に遭遇すると、検出器で成分を調べたり、カメラで撮影したりする。国営新華社通信によると、着陸からの2カ月で410メートルを移動したという。

 祝融は昨年7月、火星探査機「天問1号」に搭載されて打ち上げられた。今年2月に火星を回る軌道に入り、軌道上に残る周回機から切り離されて5月15日に火星の北半球に着陸した。現在、広大な平原を南に向かって進んでおり、画像や風の音などを周回機経由で地球に送信している。

 中国にとって、探査機の火星軌道への投入と着陸、探査車の活動はどれも初めての試みだったが、米国が一つずつ段階を経てきた探査に一気に挑み、成功させた。特に、探査車は旧ソ連も実現できていない。国営メディアは着陸や祝融の探査を詳報。SNSには「すごいぞ、我が国!」といった投稿があふれ、習近平国家主席は「中国は惑星探査の分野で世界の先頭集団に入った」とコメントした。

 中国が「宇宙強国」の目標を掲げ、激しい勢いで開発を進める背景には、国威発揚だけでなく、宇宙開発が軍事技術と密接に関係していることがある。開発にも軍が深く関与しており、米国に次ぐ規模の巨費を投じているとみられる。

 2019年には月探査機を世界で初めて月の裏側に着陸させ、20年には米国と旧ソ連に続いて44年ぶりに月の土を地球に持ち帰った。さらに、日米ロなどが参加する国際宇宙ステーション(ISS)とは別に、独自の宇宙ステーション建設も進めており、来年にも運用を始める予定だ。(上海=井上亮)

 中国の成功について、探査車の開発に詳しい東北大大学院の吉田和哉教授(宇宙探査工学)に聞いた。

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 探査車「祝融」は、米航空宇宙局(NASA)の探査車「オポチュニティー」や「スピリット」に見た目が似ている。逆に、着陸は、エアバッグを使ったり空中からつるしたりした斬新なNASAとは違い、パラシュートで減速して最後はロケットエンジンを逆噴射して軟着陸するという極めて標準的な方法をとった。

 宇宙開発は、実際にミッショ…

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