交代を決めるのはベンチの子 小学生サッカーの意識改革

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編集委員・中小路徹
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 そのサッカーチームは、試合で他チームや審判にびっくりされることがある。

 愛知県安城市にある安城北部FCの5年生チーム。

 クラブには小学生130人が所属し、5年生は26人が登録されている。

 驚かれるのは、選手交代が多いせいもあるが、何よりも交代の仕方だ。

 誰の指示も受けずに、ベンチで試合を見つめていた子どもが立ち上がり、審判に交代を申し出る。認められると交代する選手の名を呼び、入れ替わる。

 「交代のタイミング、どのポジションの選手と代わるか、子どもたちが判断するようにしています」

 ヘッドコーチの西尾彰洋さん(51)が説明する。

 チームの目標である積極的な守備や、かわされた後のカバーリングがしっかりできているか。最終ラインの上げ下げはどうか。動きが落ちている選手はいないか。状況を見ながら、立て直すべき点に気づいたら「自分が出る」という意思を示すのが、このチームの流儀なのだ。

 3月、コーチ陣で話し合いを重ね、選手たちの主体性を高めたいという目的で導入した。練習試合だけでなく、公式戦でも行っている。

 副産物も生まれている。

 控え選手たちが試合をちゃんと見るようになった。「あいつと代われ」と誰も言ってくれないから、調子の悪い選手に代わって貢献できることを自分で探す。

 どの位置にも入れるよう、それぞれが特定のポジションにこだわらない傾向も出てきた。

 「こちらが『代わった方がいい』と思っていた子どもとは別の選手を指名することもあるのですが、それはそれでいい」と西尾さん。

 時には、ピッチの中から、「交代してくれ」と求めてくる子もいる。

 性格的に控えめだったり、実力に自信がなかったり、自ら交代出場の声を上げられない子には耳元でささやく。

 「なんか、攻守の切り替えが遅くない?」「プレッシングができなくなってない?」

 子どもは勇躍、ベンチから立ち上がる。

 「自分たちの指示は極力少なくし、子どもたちの主体性を大事にしよう」

 スタメンも固定しない方針だ。メンバーが固まると、選手たちの間で代わりづらい空気ができてしまうからだ。そこで、アップを見て先発を決める方針も導入した。試合前のウォーミングアップの集中力は増した。

 コーチ陣の考え方がそんな方向に変わったのは、1月に愛知県岡崎市で開かれた「サイレントリーグ」に参加したのがきっかけだった。

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