初夏から秋のアウトドア 毒ヘビの「マムシ」に要注意!

竹谷俊之
【いきもの目線】ニホンマムシ@ジャパン・スネークセンター=2021年6月10日、竹谷俊之撮影
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 今回の「いきもの目線」は毒ヘビの「ニホンマムシ」。かまれると命を落とすこともある恐ろしいヘビだ。コロナ禍を背景に、キャンプなどアウトドアブームが続いているが、マムシも山や川など自然豊かな場所に生息しているので注意が必要だ。群馬県太田市にある「ジャパン・スネークセンター」の協力で360度動画を撮影し、マムシの生態などを紹介する。

 マムシは体長50~60センチの小型のヘビで、琉球列島を除く日本全土に生息する。体色や模様に個体差はあるが背中の銭形模様が特徴。性格は攻撃的だが、攻撃範囲(約30センチ)に入らなければ、かんでくることはない。受精卵は母体内にとどまり、成長し幼体となって外に出てくる。1度に5、6匹の子ヘビを産むという。

 主任研究員の堺淳さんによると、今年は7月までに国内の病院から約10件の問い合わせがあったという。マムシの毒は「出血毒」に分類され、血管の細胞を壊して出血を起こす。毒の量にもよるが、かまれた部分に強い痛みが生じ、徐々に腫れてきて、1日でパンパンに腫れ上がるという。進行すると血小板の減少により、全身の出血(皮下出血や消化管出血など)を起こし、悪化すると急性腎不全で死に至ることもある。ただし、早い段階で血清治療をすれば、重症化のリスクをかなり抑えることができるという。

【動画】ジャパン・スネークセンターの主任研究員がニホンマムシを解説=竹谷俊之撮影

 そんな恐ろしいマムシに囲まれたら――。同センターの協力で野外採毒場に幅90センチの水槽を用意。その中に、360度カメラを設置して5匹のマムシを入れてもらった。マムシたちは予想外に動き回り、カメラに向かってきたり、前を通り過ぎたりと、人間が近づくことができない角度からの様子を撮影することができた。

 さらに許可を得て、マムシの野外飼育場に潜入。ヘビ用のフックを使って堺さんにマムシを探してもらうと、壁際の草むらの中でじっとしているマムシを見つけた。マムシとの距離は1メートルもないが襲ってくる気配はなかった。ただ、マムシがいることを知らなければ、足を踏み入れてしまうような状況だった。

 同センターは国内唯一のヘビ専門研究機関で、正式名称は一般財団法人「日本蛇族学術研究所」。ハブやマムシ、ヤマカガシなど約50種、約千匹のヘビを飼育、展示し、ヘビの生態や毒蛇咬症(こうしょう)に関する研究や抗毒素(血清)を作るために毒を採取している。堺さんによると、毎年、全国で3千人(推計値)以上がマムシにかまれ、死者は数人だが重症例は多いという。

 「マムシの牙は細くて短いのでチクッと感じるだけで、虫さされか、とげが刺さったのかと勘違いすることがある」と堺さん。草むらや落ち葉などに隠れていて見つけにくく、うっかり手を近づけたり、踏んだりしてかまれる場合が多いという。ヘビにかまれたと思ったら、スマートフォンで撮影するなど、その時の様子を記録に残せば、医療機関での治療がスムーズになるという。ヘビの存在を確認できない場合でも、何かにかまれて腫れてくればマムシの疑いが大きいという。

 7~9月はキャンプをしたり、ハイキングに出かけたりする人たちが増えるため、マムシにかまれる被害も多くなる。堺さんは「テントの中にマムシが侵入してきてかまれた例もある。特に、夜のキャンプ場では、短パンやサンダルなどで動き回るのは避けた方がいい」とアドバイスする。

 では、マムシなどの毒ヘビにかまれたらどうするか。堺さんは、応急処置で吸引器があれば多少の毒を吸い出せる可能性もあるが、無ければ、とにかく安静にして救急車を呼ぶか、車を使うなどして、できるだけ早く病院で治療をしたほうがいいと話す。かつては傷口を切ったり、強く縛って血行を止めたりしたが、患部全体を広く包帯のようなもので軽く巻くことで、毒の吸収を遅らせることも有効だとされているという。マムシの場合は腫れも広がってくるため、圧迫に注意しながら血流を緩めることも必要で、すぐに病院に行くことができるのであれば何もしない方がいいという。(竹谷俊之)