人工衛星で「全損」認定 熱海の水害で損保大手が新技術

山下裕志
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 静岡県熱海市などで大きな被害が出た豪雨で、損害保険会社が新技術を生かした保険金支払いを進めている。従来は現地調査をして保険金を算出してきたが、今回は人工衛星で撮影した画像分析なども生かし、立ち入り調査を省いてすばやい支払いにつなげている。

 東京海上日動火災保険は熱海の土石流災害から1週間足らずで、被災住宅の契約者へ保険金を全額払う「全損」を5件認定した。これまでの方法だと、現地入りする担当者と契約者との予定調整などで、認定が2週間先になることもあった。迅速な支払い手続きに一役買ったのが、昨年から連携するフィンランド企業ICEYE(アイサイ)の人工衛星だ。

 発災直後に被災地をレーダー衛星で観測し、被害を「全損」などに3分類。東京海上日動側もグーグルマップや被災地の報道写真などと照らし合わせ、認定を進めた。担当の和田篤課長は「大規模災害が起きても、この人工衛星ならば天気に左右されずに広範囲を調べられる」という。現地入りする担当者を減らせば、新型コロナウイルスの感染拡大防止にもつながる。担当者が現地に泊まり、被災者やボランティアの宿泊先が不足する事態も避けられる。元々は浸水被害を想定して導入したしくみで、会社側による確認を今後できるだけ簡略化して支払いを早め、「全損」以外の認定へ広げることもめざす。

 立ち会い調査を減らす工夫は他の損保も取り組む。三井住友海上火災保険人工知能(AI)搭載のドローンと、顧客からネットの専用サイトで受け取った写真などを組み合わせ、浸水被害を調べるしくみを6月に整えた。同社は試験的にサイトを通じた自己申告で今回の浸水被害を認定。グループのあいおいニッセイ同和損害保険も来年度、同様のサイトを活用する予定だ。

 契約者が住宅の浸水場所とペットボトルを並べた写真を撮影・送信すれば、保険金を自動的に見積もる。損害保険ジャパンはそんなサービスを昨秋始めた。ペットボトルは浸水の深さを測る目安。今回の災害でも契約者へ案内している。(山下裕志)