人間国宝の「陶壁」引っ越し 631枚、壊さず丁寧に

村上潤治
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 岐阜県出身で人間国宝の故・加藤卓男さん(1917~2005)が1990年に制作した陶壁(縦3メートル、横5メートル)の移設作業が、税務大学校名古屋研修所(名古屋市緑区)の移転に合わせて進んでいる。

 ペルシャで消滅したとされるラスター彩とよばれる技法でつくられた。「知育、体育、徳育」にちなんだ書籍、ボール、楽器を手にした人物を、631枚の陶器を組み合わせて表現している。

 接着剤で固定された薄い陶器をはがすのが難しく、建物とともに取り壊される可能性もあった。職人が試行錯誤し、隙間にアルコールを挿入して密閉する方法で、約2週間かけて1枚ずつ丁寧にはがした。表面を磨いてきれいにした後、研修所の移転先で名古屋東税務署(同市東区)も入る名古屋第三国税総合庁舎に運び、再び壁に接着している。

 加藤さんと親交があった国税OBの桂川明税理士(83)は「歴史に残る作品。若い職員や地域の人にもぜひ見てもらいたい」。一般見学は、今年秋ごろの移転後に受け入れる方向という。(村上潤治)

加藤卓男(かとう・たくお)

江戸時代から続く美濃焼窯元5代加藤幸兵衛の長男として岐阜県に生まれた。県立多治見工業学校(現・多治見工業高校)を卒業。兵役にとられて広島で被爆。その後、ペルシャ陶器の華とうたわれながら16、17世紀ごろ消滅したとされるラスター彩陶器を再現した。奈良時代から伝わる「三彩」の復元にも力を注ぎ、1995年に人間国宝になった。制作した陶壁は岐阜・下呂温泉の水明館、多治見市文化会館、NHK名古屋放送センタービル(名古屋市東区)など、全国に少なくとも30作品ほどあるとされる。