「核なき世界へ、日本には特別の役割」 元米高官に聞く

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聞き手・渡辺丘
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 核兵器を史上初めて全面的に禁ずる核兵器禁止条約が1月に発効した。しかし、今も核保有国や「核の傘」の下にいる日本などは条約に背を向ける。核兵器廃絶に向け、条約をどのように生かすべきか。広島、長崎の「原爆の日」を前に、米大統領だったオバマ氏の広島訪問の実現に貢献したローズ・ゴットメラー元国務次官に聞いた。

 ――今年1月に発効した核兵器禁止条約をどう評価していますか。

 「核禁条約の取り組みが始まった当初は、核不拡散条約(NPT)を損なう、と懸念した。しかし核禁条約が現実に発効した今、核禁条約とNPT双方のコミュニティーが結びつき、密接に協力する必要性がある。核禁条約の署名国の多くは、NPTにも加わっている。核兵器のない世界を実現するまで、核兵器の削減や廃絶の取り組みを強めるという共通の目標に向けて連携できると思う」

 ――核禁条約の第1回締約国会議と、5年に1度のNPT再検討会議が来年1月以降に開かれる見通しです。双方はどうすれば対話の席につき、溝を埋めることができますか。

 「公式には難しくても、二つの条約の署名国が協力するための非公式な方法は多い。二国間や多国間の政府間交渉の前に、軍縮や不拡散に取り組んできた専門家や元政府当局者らが協議し、そこに現役の当局者が加わる方法もあるだろう」

 「米国の同盟国である日本や北大西洋条約機構(NATO)の加盟国は、核禁条約よりNPTに重きを置いてきた。核抑止に頼るこれらの国々には特別な役割がある。拡大抑止(いわゆる「核の傘」)の限定的な役割を説明するとともに、(核保有国に誠実に軍縮交渉を行う義務を課している)NPT第6条の下で核軍縮をめざす決意を強調することだ」

日本 対話促す力

 ――米国の「核の傘」の下にいる日本は核禁条約への批准を拒否しています。

 「日本は唯一の被爆国として、核兵器の恐ろしさを世界に伝える特別な役割がある。日米両国は核軍縮に取り組む責任がある。一方、オバマ元大統領が述べたように、核兵器が存在する限りは、我々は安全で効果的な核抑止力を維持しなければならない。米国の「核の傘」に守られている日本にとっても良いことだと思う。日本は、核禁条約とNPT双方のコミュニティーを結びつけ、対話を始めさせる力がある」

 ――バイデン大統領は当選前の昨年8月、「広島、長崎の恐怖が二度と繰り返されないために、核兵器のない世界に近づくよう取り組む」として、オバマ政権の理念の継承を表明した。政権発足後の3月に示した国家安全保障戦略の暫定指針では、「核兵器の役割を減らしていく」と明記された。バイデン政権下での核軍縮の行方をどう見ますか。

ローズ・ゴットメラー元米国務次官に聞く

今年発効した核兵器禁止条約をどう生かすか――。朝日新聞は7月31日、広島市広島平和文化センターと国際平和シンポジウム「核兵器廃絶への道~『希望の条約』が照らす新しい世界」を開催し、ライブ配信します。その登壇者のひとり、ローズ・ゴットメラー元米国務次官にインタビューしました。記事の後半では、シンポの視聴方法も案内しています。

 「政権発足後すぐに、(米ロ…

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