モンゴルの英雄の子が日本の英雄になるまで 角界の頂点、孤独と苦労

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鈴木健輔
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 大相撲で歴代最多の優勝45度を誇る横綱白鵬(36)=宮城野部屋=は27日、日本相撲協会に引退することを伝えた。モンゴル出身の白鵬は、親方になるための条件である日本国籍をすでに取得しており、今後は角界に残って後進の指導に当たる意向だ。

 あの時の白鵬の表情を忘れられない。誇らしさと安堵(あんど)に、寂しさと悔しさが混ざっているように見えた。

 「わたしは日本人になります」

 2017年夏、名古屋。歴代最多記録である通算1047勝を目前にしていた横綱が、ある酒席で口にした。日本国籍は、夢である親方になるのに必要な条件。モンゴルから15歳で来日し、日本人女性と結婚し、父となり、32歳になっていた。

 重い決断だった。白鵬は母国で、「国民的英雄の子」だからだ。

 父はモンゴル相撲の横綱で、レスリング選手としてメキシコ五輪で同国初のメダリストになったジジド・ムンフバトさん。我が子の日本国籍取得に反対していた。05年に旭天鵬モンゴル出身力士で初めて日本国籍を取った際、母国の親が「金のために息子を日本に売った」と非難されたことを、白鵬は知っていた。

 モンゴル国籍のまま親方になれないか模索したことがあるが、角界のルールにはあらがえない。でも、親方になって弟子を育てたい。日本と、相撲への恩返しのためだ。

 11年3月11日、東日本大震災が26歳の誕生日と重なった。

 「宿命」と表現し、被災地を…

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