ゴーン被告の逃亡を手助け 元グリーンベレーに実刑判決

主役なきゴーン法廷

金子和史
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 日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告(67)を海外に逃亡させたとして、犯人隠避の罪に問われた米国籍の親子2人に対する判決公判が19日、東京地裁であった。楡井英夫裁判長は、米軍特殊部隊「グリーンベレー」元隊員のマイケル・テイラー被告(60)に懲役2年(求刑・懲役2年10カ月)、息子のピーター被告(28)に懲役1年8カ月(同・懲役2年6カ月)の実刑を言い渡した。

 ゴーン元会長が日本に戻って裁判を受ける見通しは立たないままで、「刑事司法の侵害の程度が極めて大きい」と量刑理由を述べた。

 判決などによると、テイラー親子は2019年12月29日、ゴーン元会長=会社法違反などの罪で起訴=が海外渡航禁止の条件で保釈中と知りながら、元会長を音響機器用の箱に隠し、関西空港からトルコ経由でレバノンに逃亡させた。

 判決は「大掛かりで周到な準備を整え、職業的な手際の良さで前代未聞の海外逃亡を完遂した」と指摘。準備から実行まで、「マイケル被告が主導的な役割を果たした」と判断した。

 親子は犯行前に元会長から約9300万円の送金を受け、一部はそれぞれが経営する会社の経費の支払いに充てていた。このため判決は「送金には報酬の趣旨も含まれており、主な犯行動機は報酬目的だった」と認定した。親子側は元会長らから「日本で拷問を受けている」「保釈中の者を逃亡させても罪にならない」と聞かされて助けたと主張したが、判決は「説明をそのまま信じたとは考えがたい」と退けた。

 テイラー親子は20年5月、日米間の犯罪人引き渡し条約に基づいて米捜査当局に逮捕され、今年3月に日本に移送された。弁護側はこの間の約10カ月の身柄拘束を考慮して刑期を短縮するよう求めた。判決は「日本の法令に基づく拘束ではなく、外国に身柄を引き渡すために行われた」として、限定的にしか考慮できないと判断した。

 親子と一緒に逃亡を手助けしたとして逮捕状が出ている米国籍のジョージ・ザイエク容疑者(61)は今も身柄が拘束されていない。(金子和史)

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