決勝点のランニング本塁打 ゴミ拾い続け「運」を味方に
(18日、高校野球石川大会 鵬学園7-6金沢商)
延長十回、無死二塁。鵬学園の主将新村怜央(3年)は、ほぼ真ん中に入った直球をコンパクトに振り抜いた。快音とともに、打球は右中間に飛んだ。
打球の行方は見ていないが三塁打だと思った。だから、がむしゃらに走った。すると、三塁コーチが手を回していたので、三塁をけった。本塁を踏んだその瞬間、歓声が上がった。そこで我に返った。
両チーム計28安打。延長までもつれた乱打戦で、決勝点となるランニング本塁打を放った。
「イカ釣りの町」で知られる能登町小木出身。小学生の頃から「ゴミ拾い」が趣味だった。中学の頃は早朝、ゴミ袋片手に自宅近くの海岸を歩いた。ハングル文字が書かれたペットボトルやたばこの吸い殻……。「誰も気がつかぬうちに、町がきれいになっていたらいい」と黙々と続けた。
中学3年の時、強豪金沢への進学を考えたが、春夏通じてその金沢を11度、甲子園へと導いた浅井純哉(64)が監督を務める鵬学園を選んだ。
その浅井は、私生活の行動が野球につながるとの持論を持つ。「人が見ていない時こそ、自分が問われる」。浅井の指導をそう受け止めた新村は、高校でもゴミ拾いを続けた。この日の本塁打はそんな日頃の行いと、どこか地続きにあると考えている。
そういえば、この日の試合前も、学校の駐車場で小さなゴミを拾っていた。
「他人が落としていった運を、ラッキーと思って拾うんです」
運を味方にした、と思っている。(敬称略)(小島弘之)