安田菜津紀さんと考える入管問題 ポッドキャストで

論座編集部
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 名古屋出入国在留管理局(名古屋市)で今年3月、収容されていたスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が亡くなりました。ウィシュマさんに対する入管の対応に批判が高まっただけでなく、人権意識を欠き、国際基準から乖離(かいり)しているとかねて指摘されてきたこの国の入管行政の問題点を、あらためてあぶり出しました。

 朝日新聞の言論サイト「論座」は今後、朝日新聞ポッドキャストにゲストをお招きし、入管・難民問題をシリーズで取り上げていく予定です。初回は、この問題について精力的に取材を続けてきたフォトジャーナリストの安田菜津紀さんに、入管の「体質」や、日本の難民認定のいびつさ、そして、若い世代を中心とした収容者支援やウィシュマさんの死の真相究明のとりくみなどについて、お話をうかがいました。

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生存権さえ認められていない」

 安田さんは強い危機感とともに「在留資格を失った外国の方の生存権さえ認めていない状況が、残念ながらこの日本社会で起きてしまっている」と語ります。

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朝日新聞ポッドキャスト収録中の安田菜津紀さん

 ウィシュマさんは留学ビザで来日後、学校に通うことが困難になり退学。昨年8月に収容され、体調が悪化しました。支援団体によると、ウィシュマさんは亡くなる直前、歩けないほど衰弱しており、点滴や仮放免を求めていたのに、入管側は応じなかったといいます。

 法務省出入国在留管理庁は4月、死因を「不明」とする中間報告を公表しましたが、容体を懸念した医師が当局に仮放免を勧めた事実を記載していなかったことなどが、後に判明しました。同居していたスリランカ人男性に暴力を振るわれ、警察に相談したのが収容のきっかけだったのに、DV被害者向けの手続きに沿った処遇をしなかった不備も明らかになりました。

 遺族や支援団体、野党はこの間、事件の真相解明を求めてきましたが、法務省は監視カメラの映像の開示を拒否しています。近く最終報告がまとまる予定ですが、客観的で公平な報告になるのか、すでに疑問の声が噴出しています。支援団体は、ビデオ開示と再発防止の徹底を求める署名活動を始めました。

「外国人を管理する」発想

 安田さんは「(ウィシュマさんの件は)氷山の一角に過ぎない」とした上で、こうした「外国人を管理する」発想は、命の危険から逃れてきた難民にも向けられている、と指摘します。

 実際に、日本の難民認定をめぐっては多くの問題が指摘されてきました。最初の審査は入管の担当官だけで行われる上に、審査期間は平均で約2年。不服申し立てしても、結果が出るまでさらに2年以上を要します。難民申請中に収容された人も、仮放免などが認められない限り、収容が続くことになります。日本も採択に賛成した国連の移民に関する国際協定には「収容は最終手段」「可能な限り最短期間」と明記されていますが、日本では収容期間の上限が設けられておらず、拘束の必要性を裁判所が判断する仕組みもありません。

 さらに、こうした手続きを経たうえでの難民認定率の低さも、欧米に比べて際立っています。日本で2020年に難民と認定されたのは47人。法相が個別の事情を考慮して在留を認める在留特別許可などを含めても91人にとどまります。

 政府は、外国人が入管施設に長期収容される事態を解消するためなどとして出入国管理法改正案を提出しましたが、この法案は、難民認定申請を2回却下された人の送還を可能にするなど、入管当局の権限を強化し外国人の在留管理を事実上、厳格化するものでした。

入管法、「真の意味での『改正』」へ議論を

 ウィシュマさんの死もきっかけにして反対の世論が高まったことで、政府・与党はさきの国会での成立を断念しました。しかし、安田さんは「この問題は決して終わったわけではない。入管法の真の意味での『改正』に向けて、私たちは入管問題を考え、論じ続けなければならない」と強く訴えます。

 日本はこの国で生きる外国人を尊厳ある存在として扱っているのか。在留資格がない人にも人権があるという当たり前のことをきちんと心に刻んでいるのか。そんな根本的な問いを、私たちは突きつけられています。(論座編集部)

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朝日新聞ポッドキャスト収録中の安田菜津紀さん