50年ぶりのヒナ、すくすく40羽! 長野のライチョウ

近藤幸夫
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 国の特別天然記念物・ライチョウが絶滅したとされてきた中央アルプスで、環境省が今夏、計45羽のヒナを確認した。中央アルプスでは約50年ぶりの自然繁殖で、同省はこのうち5家族計36羽(母鳥5羽、ヒナ31羽=15日現在)を、木曽駒ケ岳(2956メートル)周辺に設けた五つのケージで保護している。順調に進めば、8月上旬にもヒナを放鳥する予定だ。

 記者2人が11~12日、現地でライチョウの様子を取材した。ケージ(幅約2メートル、長さ約3・5メートル、高さ約1メートル)は木曽駒ケ岳直下の頂上山荘近くに3カ所、宝剣岳直下の宝剣山荘近くに2カ所。午前と午後の1日2回、家族をケージから出して散歩させ、環境省職員らが見守っている。

 11日午後2時、雨が降る濃霧の中、ケージの扉を開けると、母鳥を先頭に手のひらに乗る大きさのヒナ7羽が元気よく飛び出した。エサとなる高山植物の葉などを母鳥と一緒についばむ。標高3千メートル近い高山帯で日が差さず、気温は日中でも1ケタ台と低温だ。ヒナは体温調節ができないため、母鳥は何度もヒナをおなかに潜り込ませ、温める抱雛(ほうすう)を繰り返した。

 5家族のうち、最も早い7月1日に孵化(ふか)したのは、2018年に北アルプス方面から飛来が確認されたメスのヒナ。このメスは過去2年、環境省が、生息地の乗鞍岳などから移した卵を抱かせたが、いずれもヒナが全滅。今年、やっと自らのヒナたちを育てている。

 昨夏、乗鞍岳から3家族計19羽(母鳥3羽、ヒナ16羽)を移送して、同省によるライチョウの「復活作戦」が本格的に始まった。同省は、いまケージで保護している5家族を8月上旬にも放鳥するほか、別の2家族を茶臼山動物園長野市)と那須どうぶつ王国(栃木県)に移送し、来年以降に繁殖させて自然復帰させる計画だ。現在、飼育下でも安定供給できるコマツナなどを与えている。

 ライチョウはヒナのうちは性別の判定ができない。四つの巣から回収した卵の殻を分析して家族や雌雄の構成を調べ、動物園に移送する家族の選定材料にする。環境省信越自然環境事務所(長野市)の小林篤専門官は「予想以上にヒナが多く孵化した。まだ課題は多いが、何とか動物園に移送できるようがんばりたい」と話した。(近藤幸夫)