「最後ってかっこいい」 閉校する高校の野球部を選んだ

米田千佐子
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(19日、高校野球奈良大会 法隆寺国際16-4平城)

 校歌は1回しか歌えなかった。来春で閉校する平城は最後の夏が終わった。

 平城が7点を追う五回無死一、三塁。碇谷(いかりたに)優季(3年)は狙い球を絞った。法隆寺国際の先発坂本亘弥(こうや)(同)は直球に伸びがあり、内角を攻めてくる。落差のある変化球はタイミングが合わない。だが碇谷は「直球は合っている」。

 フルカウントからの7球目、低めの直球がきた。振り抜くと、バットの芯に当たった打球は左中間を鋭く抜けた。全力疾走で二塁へ。2人が本塁にかえっていた。自らも4番の福角(ふくすみ)健太(同)の適時打で生還した。

 閉校が決まっていた平城。碇谷は「最後ってなんかかっこいいな」とあえて進学した。下級生が入ってこないため、「後輩がいなくて大変かな」と心配したが、予想に反して、同学年の選手10人、マネジャー2人の12人が入部した。一人も欠けずにここまできた。

 部活以外も選手10人はいつも一緒。でも、グラウンドではそれぞれの守備位置に分かれる。碇谷は二塁を守る。エース寺山継介(同)が打ち込まれたこの日、寺山を一人にしないよう、懸命に声をかけた。六回、二遊間を抜く飛球を捕ろうとジャンプ。ほかの野手と交錯してしまったが、球を追う気概を見せた。

 吉岡健蔵監督は「点差が離れていても、みんなベンチで全然下を向いていなかった」。初戦は2度追いつかれてからのサヨナラ勝ち。最後まで逆転を信じたが、今度はひっくりかえせなかった。

 選手10人だからこそ、たくさん打撃練習ができた。守備位置に気を配るようになったし、最後まで球を追う粘りも平城で身につけた。碇谷は「この12人じゃなかったら、ここまでこられなかった。最高の仲間です」と笑った。(米田千佐子)