対馬市で進むICT活用教育 離島教育の弱点補う

対馬通信員・佐藤雄二
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 新型コロナ禍でオンライン授業の必要性が高まり、全国の小中学校で情報端末の整備が進む中、長崎県対馬市では、いち早く2018年度から義務教育の場でICT(情報通信技術)の活用が進められている。児童・生徒の少なさや地理的な交流の難しさなど離島特有の不利な教育環境を補う効果や学習効率の向上など、様々な利点が報告されている。

 対馬市は18年度、中学校は1人1台、小学校は1クラスで授業ができる台数のタブレット端末(iPad)を配備した。支障なく授業できるよう十分な通信容量も確保。敷設や維持管理の費用も含めて試算した結果、校内LANではなく高速通信規格「LTE」回線を選んだ。

 朝鮮半島まで約50キロ、九州本土の博多までは約130キロある対馬。「不便な離島で都市部に負けないようにするには、子どもたちにいち早くICT環境に慣れてもらうための整備が必要だ」と比田勝尚喜市長は導入の理由を語る。

 市教委によると、以前は学校のパソコン教室備え付けの端末を共有で使っていた。だが、タブレットを1人1台使える環境を整えたことで、パソコン教室へクラスごと移動する必要がなくなった。校外学習や修学旅行にも携帯でき、端末の活用法が大幅に広がったという。

 昨年のコロナ禍による休校中には、中学各校は生徒の健康状態や自宅学習状況を端末で把握。その実績は文部科学省の資料にも取り上げられた。

 教員の負担にも配慮した。教員向け研修では、初歩的な使い方に加え、配布物を撮影して生徒に一斉配信すれば作業時間の節約につながることなど、活用事例も紹介した。端末の設定は、市教委が一括して受け持ち、危険度の高いサイトとの通信を遮断する設定も組む。

 同市美津島町の雞知(けち)中では、パソコン教室でなくても学習成果発表の資料作りができるようになり、効率化が進んだという。保護者への連絡や生徒総会の資料配布や閲覧など、授業以外でも活用されている。

 中島清志校長は「導入初期は、教諭の負担感は大きくなるが、長期的には働き方改革にもつながっていくと期待している」と話す。

 同市豊玉町唐洲(からす)の市立南小学校は、全校児童9人。授業は1人の教諭が2学年を同じ教室で受け持つ複式学級で行われる。教諭が一方の学年に解き方の説明や課題を出す「直接指導」をする間、他方の学年に問題を解くなど自主的な学習をさせる「間接指導」の充実にICTが大いに役立っているという。

 5、6年生を担任する古藤進一教諭(48)は、この間接指導で、児童に課題を解いたノートを撮影させ、画像をテレビ画面に映して発表する方法をとる。理解度の低い児童にはヒントとなる動画を配信し、補足説明できるようになった。

 昨年は、市内の別の小学校と通信をつなぎ、物語や詩を発表しあう授業を実施した。普段、限られた人としか顔を合わせない小規模校の子どもたちにとって、色々な人の意見を聞いたり、発表しあったりすることは、貴重な機会だ。相手の作品を読み込んでおかないと、感想や意見を言えないこともあり、いつも以上に集中していたという。

 古藤教諭は「過疎地の学校でも、表現力や、限られた時間で感想をまとめる思考力を身につけられる」と手応えを感じている。

 市教委の担当者は、今後のICT活用教育について「導入の目的とは別の教育効果につながる活用事例も生まれている。紙でもデジタルでも、教諭や児童、生徒にとって利用しやすく、高い教育効果が得られるあり方を考えたい」と話している。(対馬通信員・佐藤雄二)