第2回戦争の理不尽、コロナ禍に重ね 創作劇でつむぐ学校史

尾崎希海
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 第45回全国高校総合文化祭が7月31日から和歌山県で開催されます。検温や一般観覧の制限などの感染対策を取りながら、全国から高校生が集い、日頃の成果を披露します。全22部門の参加校の一部を紹介します。

 今年創立100周年を迎えた広島市立広島商業高校。その節目の年に、演劇部は校史をテーマにした創作劇でわかやま総文に出る。第2次大戦下、国策による商業科目の廃止や原爆被害、戦後の廃校と再生――。時代に翻弄(ほんろう)された「市商」の歴史をコロナ禍の自分たちに重ね、「やりたいことができる世の中を」という願いを舞台で表現する。

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学校の歴史をテーマにした創作劇では、戦時下の生徒たちの様子も描かれる=2021年7月11日午前11時33分、広島市東区の広島市立広島商業高校、尾崎希海撮影

 脚本は、市商演劇部の現在から始まる。コロナ禍で上演機会が次々に失われるなか、「最後のチャンス」だった文化祭も中止が決まる。「もしかして、うちらこれで引退?」「これで終わったらうちらの負けじゃないん」。たとえ誰も見ていなくても、自分たちの劇をやりきりたい。部員たちは無人の客席に向かって、戦時下の市商をふりかえる作品の上演を始める。

 当時男子高だった市商は、国策で「造船工業学校」に転換させられる。学びたかった商業を学べず、軍需工場へ動員されていく生徒たち。原爆では生徒教職員200人以上が即死し、校舎も焼け落ちた。

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教師役が読み上げる数字を、生徒役が計算する珠算の授業のシーン。戦況の悪化で商業科目は廃止された=2021年7月11日午後0時15分、広島市東区の広島市立広島商業高校、尾崎希海撮影

 部長の山川結衣さん(3年)は「私たちの知らない市商を演じられるのは、難しいけどやりがいがある」と話す。当時を生きた人たちの心情に近づくため、写真や手記をみたり、卒業生に話を聞いたりしてイメージを膨らませた。「彼らが味わった理不尽は、コロナ禍の自分たちに重なる」

 わかやま総文での上演日は8月6日に決まった。山川さんは「この日に上演できるのは、作品のもつパワーかもしれない。全国の人に8月6日という日を印象づけたい」。演出担当の平山晴菜さん(3年)は「コロナでみんな、やりたいことができなくなっている。演劇がしたいという気持ちを舞台にぶつけます」と意気込む。(尾崎希海)