23時就寝、睡眠見直したら…最後の試合で公式戦初HR

三宅梨紗子
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(20日、高校野球広島大会 武田5-8祇園北)

 うだるような暑さで、顔から汗が噴き出す。七回表、2死一、二塁。1―8。打席には武田の黒川章(あきら)君(3年)。1点入らなければ、コールド負けが決まる。

 「僕で終わりか」。弱気になりかけていた3球目。内角高めに甘い直球がきた。何も考えず振り抜いたバットが快音を響かせる。「ファウルかな」。高々と弧を描いた打球を不安げに目で追った。球は右翼スタンドのポール際に吸い込まれた。実感がわかないままダイヤモンドを回った。

 「しゃー!」。ベンチ前では満面の笑みで拳を突き上げる仲間が待っていた。もみくちゃにされ、ようやくうれしさがこみ上げた。

 16日の福山工戦が公式戦初出場だった。緊張で4打席無安打。代打で最終打席を譲った後輩が本塁打を放った。「次は自分も」。そう念じた黒川君の3点本塁打はチームを勢いづけ、続く八回に3点差まで迫った。だが、序盤に許したリードが大きかった。

 黒川君は、今春の県大会ではベンチ外だった。最後の夏を前に「グラウンド以外の行動で差がつく」という岡崎雄介監督の教えで、見直したのは睡眠だった。

 夜更かしや徹夜をすることが多かった。枕やマットレスなどの寝具を質の良いものに換え、午後11時には就寝するようにした。生活リズムが整い、練習試合での調子が上がってきた。

 チームは負けたが、黒川君には達成感があった。「最後まであきらめなかった。その成果かな」。ホームランボールを手に笑顔で話した。(三宅梨紗子)

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