ドイツの大洪水、砲撃受けたよう 気候変動の関連指摘も

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ジンツィッヒ=野島淳
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 対岸の教会につながる橋は崩壊し、跡形もない。次々と人が見に来ては、川を眺めて呆然(ぼうぜん)と立っていた。

 温泉やカジノなどで有名なドイツ西部のバート・ノイエンアール・アールワイラー。川沿いにある高級ホテル1階の店舗は窓ガラスが割れ、目の前の道路も大きく陥没している。まるで砲撃を受けたかのようだ。

 ドイツとベルギーで合わせて約200人が亡くなった大洪水から1週間近く過ぎた20日、朝日新聞の記者が現地に入った。

 友人の家の掃除を手伝っていた大学生フローリアン・メメティさん(26)は毎日、下流に8キロほど離れたジンツィッヒから通う。自宅は無事だったが、夜はなかなか寝つけないという。地下から泥を運び出す作業は体力を消耗する。「いつまで続けられるか分からない」と表情をくもらせた。

 欧州を縦断するライン川の支流アール川の流域は14日夜から15日未明にかけ、この地域の2カ月分に相当する雨が降った。この町を含むラインラントプファルツ州アールワイラー郡はドイツで最も被害がひどく、死者は122人、けが人も700人以上。約4万人が影響を受けたとみられる。

 「早く外に出ろ」。ジンツィッヒに住むベティーナ・シュレーターさん(60)が消防士の声で目覚めたのは15日午前1時30分ごろ。行政からの事前の警告やサイレンなどはなく、豪雨でも安心して寝ていた。

 地下室で寝ていた義兄夫婦を起こし、夫のクリスティアンさん(66)と外に出ると、みるみる水が迫ってきた。すぐ2メートルを超える高さまで家が水につかった。

 ジンツィッヒはライン川とアール川の合流地点にある。川から約300メートル離れた障害者施設を訪ねた。12人が逃げ遅れて亡くなった。1階の窓枠の上に茶色い線が入り、泥水につかったことが分かった。シュレーターさんは障害者施設の入居者とも、よく顔を合わせていたという。

 「これが私が想像していた津波だった」とシュレーターさんは振り返る。「日本の人たちはいつも準備しているのだろう。私たちは違った。川の水が家まで来るとは思っていなかった。生き残れて幸いだった」

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