ウナギによい丑の日へ 700種の魚食べた学芸員の思い

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 長い目でウナギのことを考えてみて欲しい――。絶滅危惧種になったこの魚を今後も食べていけるのか。700種以上の魚を味わい、ウナギ用の漁具を集める、北九州市立自然史・歴史博物館の日比野友亮・学芸員(魚類担当)に「土用の丑(うし)の日」との向き合い方を聞いた。(聞き手・小坪遊

 ――700種以上の魚を食べたそうですね。

 「1種類の魚でも、旬がある。産地や時期、年、同じ産地でもすんでいる場所で味が変わる。『どの魚が一番おいしかった?』と聞かれると一番困る。ただ、ウナギは江戸時代からかば焼きとして人気で「うなぎ店」というジャンルも確立されている。『丑の日』で、1年に1回は必ず新聞やテレビに大きく取り上げられる。これだけ長く普遍的な人気があるスターで、メディアに『指定席』も用意されているというユニークな魚は他にない」

 ――最近の「丑の日」をどう見ていますか。

 「私は毎年土用の丑の日のあたりで、うなぎ店やスーパーなどでの値段や流通状況を見ている。年によって上下はあるが、基本的には上昇傾向で、2014年あたりから、うなぎ店は高止まりし、客足も遠のいている。特に観光客が来ず、地域の客でやっている店は深刻だ。最大のかき入れ時となる土用の丑の日でも、平日に重なる年では、昼時でも待たずに入れる店もあるほどだ。一方報道では、『去年より多い』『去年より安いのか』といった話ばかり。ウナギに限らず、水産資源を考えるには少なくとも10年のトレンドは踏まえた上で論じるべきだ」

 ――報道にも問題がありますか。

 「取り上げるなら中長期的な視点を持って、ウナギにプラスになるような『丑の日』にしていかないといけない。栽培する野菜などと違って、水産資源の多くは増殖を自然に任せており、コントロールが難しい。ウナギと同じような問題は、他の魚などの水産資源でも起こりうるし、起きつつあることも伝えて欲しい。また、ウナギ離れが進めば、ウナギが戻ってきても、捕まえる技術やおいしく食べる文化が失われているかもしれない」

 ――ウナギだけでなく、ウナギ文化も危機だと。

 「私は各地で『うなぎばさみ』という漁具の情報を集めている。石を積み上げて、そこに隠れたウナギを捕まえる『石倉漁』などに使う漁具だ。写真を撮らせてもらい、『もう使わないから』と、現物をいただくこともある。狙うウナギの大きさや石倉の構造に合わせて地域ごとにうなぎばさみにも大きさや形状のバリエーションがあり、作り手の思いが込められている。こうした文化がなくなるのは損失であり、悲しいことだ。食べる文化は、細くても長く続けられる道を考えていく方がいいと思う」