第3回「好きで障害者になったんじゃない」 隠さず語った半生

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及川綾子
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 知的障害のある27歳の男性がカメラに向かってぽつぽつと話し出した。

 小学校や中学校でいじめられたこと。お母さんに心配をかけまいと黙っていたこと。高校で友だちが出来てよく笑うようになったこと。そしてヒマラヤトレッキングに挑戦したこと。最後に「30歳になるころに自分の将来を決めたいと思う」と宣言した。

 知的障害者が中心となって、障害のある当事者の情報や思いをインターネットで発信する動画番組「きぼうのつばさ」内のコーナー「私の歴史」。先月25日に配信された58回目となる同番組では約1時間、障害のある人がドイツのスープ作りを紹介したり、講師から恋愛について学んだりするコーナーも展開された。

 番組を作るのは、知的障害者が通う事業所「パンジー」や、グループホームを運営する社会福祉法人「創思苑」(大阪府東大阪市)。2016年9月に始まった。毎月1回、ニュースやドラマなどもある。

 技術が求められる編集・撮影は、多くのドキュメンタリー番組を制作してきた小川道幸さん(73)らが担当するが、放送前には必ず当事者が確認する。小川さんは「知的障害者の思いをきちんと伝えているか。健常者の価値観で番組が作られていないかの意見を聞く。『僕らはこんなこと考えない』と言われたら編集し直すこともある」と話す。

 きっかけは、林淑美理事長(71)が、スウェーデンで障害者が番組や新聞を作る様子を視察したことだった。高校の先輩でもある小川さんに「当事者主体の発信をしたい」と相談し、準備を進めた。やまゆり園事件が起こったのはちょうどそんな時だった。

「私ら生きていたらあかんのか」せきを切りあふれた言葉

 大惨事にもかかわらず、数日はパンジーに通う人たちは事件に触れようとしなかった。林理事長もどう伝えたらいいのか迷っていた。ホールに集まってもらい話をしたところ、せきを切ったようにそれぞれが思いを口にした。「私ら生きていたらあかんのか」「好きで障害者になったんじゃない」

 2カ月後、初回の放送を迎え…

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