ウナギの「旅立ち」初確認 養殖ウナギは迷子に?

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竹野内崇宏
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 7月28日は今年の土用の丑(うし)の日だ。主役となるウナギは身近な魚にもかかわらず、生態にはまだまだ謎が多く、この1年だけでも新たな発見が相次いでいる。

 福島大や京都大などのチームは、川から泳ぎ出て、はるか外洋まで繁殖に向かう天然ウナギの旅立ちを、初めてとらえることに成功した。

 ニホンウナギは日本の川や、河口近くの海水と淡水が交じる汽水域で5~15年ほど育ち、産卵のために太平洋のマリアナ諸島沖に向かうと考えられている。

 福島大の和田敏裕准教授らはこうした行動を詳しく調べようと、太平洋に面し、陸に囲まれた汽水域が広がる福島県相馬市の内湾「松川浦」に注目した。

 松川浦で集めた天然ウナギ20匹(平均体長52センチ)と養鰻(ようまん)業者から提供を受けた養殖ウナギ12匹(同58センチ)の腹部に切れ目を入れ、3分ごとに超音波を出す発信機を入れて縫合した。

 計32匹を放流し、汽水域や川に設置した28カ所の受信機を使って2016~17年の約1年4カ月間、ウナギたちの行動を追跡した。

 その結果、天然の1匹(57センチ)が16年11月、松川浦から太平洋に出て行く様子をとらえることができた。

 当初は湾口から南に7キロ奥に入った水域にすんでいたが、10日ほどかけて徐々に湾口に近づいた。引き潮の時間、湾外に向かう潮流に乗って太平洋に出たとみられ、湾内には戻って来なかった。

 この個体の雌雄や年齢は分からないが、放流の時点で、産卵に向けて体が黒っぽくなる特徴的な状態に育っていた。このため、研究チームは太平洋沖へ向かう「産卵回遊」に旅立ったと判断した。天然のニホンウナギが産卵場所に向けて出発する行動が詳しく観察されたのは初めてという。

 ウナギはマリアナ諸島沖に半年ほどかけて泳ぎ着き、繁殖活動の末に一生を終えると考えられている。

 松川浦は北端に湾口が一つだけあり、幅は約100メートル。発信機の超音波は200~300メートル届くため、外洋に出るときに受信機でほぼとらえられるとみられる。

 他の19匹の天然ウナギは研究期間中、外洋に出たものは確認できなかった。

 一方、養殖ウナギは12匹のうち少なくとも7匹が、10~11月ごろには湾口を通って外洋に出ていた。

 養殖の12匹は、天然のシラスウナギ(稚魚)から、成長しやすい28度ほどの温水で2年ほど育てられたものだ。同じ体長でも、天然ウナギより数年若いと考えられ、腹部の色合いも天然より白っぽい状態だった。

 養殖ウナギに生殖能力があるという報告もあるが、和田准教授は「産卵や、新しい生息場所を求めて海に出た可能性もあるが、天然のウナギとは外見上、状態が大きく異なっていた。海ではうまく生きられなかった恐れがある」とみる。

 天然ウナギは、松川浦に残った個体の多くが半年以上、活動する様子が受信機から判明した。昼夜や水温、塩分濃度によって行動範囲を変えるなど、柔軟に適応する様子が見られた。

 一方の養殖ウナギは松川浦に残ったとみられる5匹も全て、放流から3カ月以内に超音波で活動が追えなくなり、行方がわからなくなったという。

 チームは養殖と天然で、放流後の行動や定着率に差があると結論づけた。

 国内の一部の河川や湖沼では、漁業法に基づいて、資源維持や回復のためにウナギを放流する義務が課せられている。チームによると、こうした放流に、一度養殖された若いウナギが使われる例もあるといい、チームは養殖ウナギが自然環境で適応できるのか、生態をさらに調べるという。

 一方、マリアナ諸島沖で産卵…

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