シェアサイクル「コグベ」こぎ出し好調

星井麻紀
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 「車に頼った生活からの脱却と町の活性化」を掲げ、前橋市が4月にスタートしたシェアサイクル「cogbe(コグベ)」。コロナ禍での「安心安全な移動手段」としても自転車は注目を集めている。ほぼ「一人1台」というクルマ王国・群馬での挑戦だが、こぎ出しは好調のようだ。(星井麻紀)

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 「手放しで喜ぶ、というわけにはいきませんが、順調に動き出しています」。市の担当者は声を弾ませる。

 「コグベ」は自転車を「こぐ」に、群馬弁で「~しよう」を意味する「べ」を合わせて作った名前。これまで市にあった「マエクル」や「マエチャリ」などの自転車貸し出し事業を一つにまとめ、市内の交通システムや町の活性化に役立つ新たな自転車サービスを目指した。整備費用は約2440万円。

 昨年、モニターを募って実証実験を行った。100台の電動アシスト自転車にGPSを搭載し、通信回線につないで自転車の動きに関するビッグデータを集積した。

 計約2万キロの走行データから見えたのは、半数以上は1日の使用時間が1時間未満ということ。行き先は公共機関や商業施設、公園などの観光地がほとんど。12%は夜間の利用で、終バスや終電が終わった後に使っていた。走りづらい道や交通量の多い道を避け、安全な裏道を多く利用していることも判明。バス停まで自転車で移動し、そこからバスに乗り継ぐ、という動線も目立った。

 こうしたデータをもとに誕生したのがコグベだ。料金は最短15分25円から。短時間なら低料金なので気軽に使え、稼働率も上がる。午後10時半から翌朝7時までのナイター料金は300円で、終バスや終電を逃した人でも使いやすい設定にした。ポートと呼ばれる専用駐輪場は、駅やバス停の100メートル内外に配置し、ほかの交通機関とのリンクも意識した。

 4月から6月末までの利用回数は5449回で右肩上がり。「マエクル」「マエチャリ」は月500回程度だったことから比べると、大きく上回る結果となった。市にはポートを設置したいというアパートやマンションからの問い合わせが寄せられている。「使ってみて便利さを実感しているのではないか」と担当者は喜ぶ。

 一方で課題もある。自転車の利用は平日が多く、狙いの一つである「街の活性化」については、その効果を測りかねている。7月からは、料金の割引が受けられるポイント制を導入。「自転車を使って余暇を楽しむ提案を考えていきたい」と市担当者は話している。

 前橋市はデジタル技術を活用してゆとりある生活を生み出す「スーパーシティー」計画で新しい公共交通体系を模索中。今後はその中にコグベを組み込み、市内の移動の利便性向上を狙う考えだ。

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 コグベを使うには、スマホが必要だ。専用アプリ「ecobike(エコバイク)」をダウンロードし、名前やメールアドレスを入力して登録する。基本的にクレジットカード決済のため、カード情報も必要となる。

 アプリ上の地図には、ポートの場所が表示され、それぞれの「貸し出し可能台数」「返却可能台数」がわかるようになっている。ポートは、市中心部に33カ所。

 ポートに着いたら画面の「借りる」ボタンを押して自転車後部にあるQRコードをアプリで読み込むと解錠される。料金プランは15分まで25円、30分50円など様々な設定があり、アプリ上で自分の使い方に合ったものが選べる。

 自転車はすべて電動アシスト付き。モーター、バッテリー制御システムといった「回生システム」は群馬県発祥の電子部品大手「太陽誘電」が開発したもので、走行中にペダルをこがない状態で走ると充電するのが特徴だ。同社はフル充電の状態で1千キロ以上走ることができる自転車を開発中で、将来的には走行中の発電で使用電力をまかなう環境に優しい自転車の開発を目指すという。

 自転車の返却は、近くのポートで自転車に鍵をかけ、アプリの返却ボタンをタップするだけ。雨の日や気温が高い日は自転車に向かないが、バスの時間が合わない、タクシーが捕まらない、といった町中移動の「小さな不便」の解消に力を発揮してくれそうだ。

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