ソフト選手が慕う「任さん」の鉄のメンタル 指導はバットの角度まで

ソフトボール

井上翔太
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 ソフトボール女子日本代表の宇津木麗華監督(58)は、選手らから「監督」以外にも、「任さん」と呼ばれ、慕われている。

 北京出身。1995年8月に日本国籍を取得するまでの中国名は、任彦麗。名字は元日本代表監督の宇津木妙子さんからもらい、名前は「彦麗」と「中華」から1文字ずつ取った。

 宇津木妙子さんとは、固い絆で結ばれている。

 日本代表が中国に遠征した79年、三塁を守っていた宇津木妙子さんに魅了された。自身は陸上のやり投げからソフトボールに転向したばかりで、グラブさばきや、小柄ながらも強い打球を飛ばす姿に憧れた。

 「宇津木さんと一緒に、ソフトボールをしたい」

 手紙などのやりとりで思いを受け取った宇津木妙子さんは、反対する元軍人の父を説得するため、中国まで来てくれた。五輪憲章の国籍事項の影響で、日本国籍取得後の96年アトランタ大会に日本代表として出場できないと決まったときは、一緒に泣いてくれた。

 異国の地で苦しい思いばかりを味わったから、今ではちょっとやそっとでは、メンタルが揺らがない。

 記者との雑談で、ゴルフの話題になったとき。「新しいボールをOBで無くすと、『またお金を無駄にした』と思ってしまうんです……」と相談すると、笑われた。「ロストボールを使えばいいの。OBを打っても、『森に返してあげた』と思えるから」

 現役時代は強打の左打者として活躍し、教える立場となっても、特に打撃は理論的に細かく指導する。

 「相手投手の顔は見ない。指から球が離れるリリースの瞬間を見ること」

 「例えばこの球種を狙っているなら、何十度の角度でバットをこう出す」

 選手からは「そんなのできない」という声が漏れることもあるが、宇津木妙子さんは笑う。「日本の選手は、そう教えられてこなかった。麗華は打撃にうるさいからね。その分、すごく勉強してるよ」

 2016年。ソフトボール東京五輪復活が正式に決まった後、今大会のチームを率いることも決まった。国内外で合宿を重ね、チームの一体感を高めてきた。今年3月に日本代表の15選手を発表した際は、一人ひとりの特徴や期待することを丁寧に語った。「彼女たちなら、私の戦略に応えてくれるんじゃないか」。一方で代表に漏れた選手についても「16選手いればという話なら……」とフォローを忘れなかった。

 選手時代は00年シドニー大会で銀メダル、04年アテネ大会で銅メダルだった。「5年間、チームを強化してきた。その魂を見せたい」。まだつかみ取れていない色のメダルは、一つしかない。井上翔太