バタフライ、原形は「平泳ぎ」だった ひざを痛めて工夫した日本選手

競泳

木村健一
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 チョウのように両腕を広げて水をかき、イルカの尾ひれのように両足をそろえて上下に動かす――。競泳の「バタフライ」には、元となる別の種目があった。

 近代オリンピックの第1回大会、1896年のアテネ五輪から採用された競泳は当時、「フリースタイル(自由形)」の1種目だけだった。1972年ミュンヘン五輪男子100メートル平泳ぎの金メダリスト、田口信教さん(70)によると、アテネ五輪の自由形で泳いだ選手は、今で言う「クロール」ではなく平泳ぎだったという。男子100メートルの優勝タイムは1分22秒20だった。

 1900年パリ五輪で平泳ぎを仰向けにした「背泳ぎ」が種目に追加された。04年セントルイス五輪でクロールによる「自由形」と分かれるかたちで「平泳ぎ」が独立した種目になった。

 バタフライ誕生のきっかけは33年に訪れる。平泳ぎの米国選手、メイヤースが平泳ぎの足の動きのまま、両腕を水面から出し、前へ持っていくチョウの動きで好タイムを出した。当時のルールでは、手足は左右対称に動かせばよかった。メイヤースの泳ぎ方は「バタフライ式平泳ぎ」と呼ばれた。

 そして、52年。日本の平泳ぎ選手・長沢二郎が、両足をそろえて上下に蹴る「ドルフィンキック」で泳ぎ記録を伸ばした。田口さんは「ひざを痛めた長沢さんが、足の負担の小さいキックを考えた」と言う。これが世界中に広まり、56年メルボルン五輪から「バタフライ」が種目として加わった。

 人類は確実に速くなってきた。男子100メートルの世界記録は自由形がシエロフィリョ(ブラジル)の46秒91で、バタフライはドレセル(米)の49秒50、平泳ぎがピーティー(英)の56秒88。

 バタフライ以来、新しい泳法は五輪種目に加わっていない。田口さんは「腕を使わずにドルフィンキックだけで進めば、もっと速く泳げるはず。ルールに縛られず、工夫して速い泳ぎを生み出してほしい。人間はもっと速くなれる」と話す。木村健一