東京オリンピック(五輪)のソフトボール1次リーグが22日、福島県営あづま球場(福島市)であり、日本はメキシコと対戦。延長八回、タイブレーカーの末、3―2でメキシコを下した。七回表途中から登板した後藤希友(みう)(トヨタ自動車)が好投した。
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後藤は20歳で、女子日本代表の最年少。チーム内でぜいたくな立場にいる。「トヨタでは目の前にモニカがいて、代表では上野さんがいる。見ていると、『すごい』と思うことが何かしら出てくる。これができるのは今、私しかいないです」
モニカとは、米国代表のモニカ・アボット。上野はもちろん、日本の上野由岐子(ビックカメラ高崎)を指す。日米が決勝を戦った2008年の北京五輪では、2人とも登板。アボットは09年から、女子日本リーグのトヨタ自動車でプレーしている。
世界最高峰の投手2人からは、何が学べるのだろうか。トヨタ自動車で活躍し、11~16年に日本リーグ新の42連勝を飾った元日本代表の山根佐由里さんに聞いた。
山根さんによると、アボットは打者一人ひとりとの勝負にこだわる。「ヒットを1本も打たれたくないタイプです」。練習から意識が高く、常に試合を想定している。ブルペンでの投球練習では、投手と捕手の間にゴムを張り、「この上すれすれを通して、変化球の軌道を作る」という練習もしていたという。
一方の上野は、「心に余裕がある」。アボットとはある意味で対照的で、「点数を取られたとしても、味方の援護点以下に抑えたら勝つ。安打を打たれても、最終的に本塁を踏ませずに、得点を取られなければいい」という考え方だ。
日本代表は二人一組のストレッチを背の順で行う。チーム最長174センチの上野と、2番目173センチの後藤は、いつもペアになる。そのときは2人とも、穏やかな笑顔を見せる。山根さんも「ソフトボールは精神面が左右する。もっと気楽にできる、と教えてくださるのが上野さん」と語る。
世界的でもタイプの違う2人から、後藤が何を吸収し、成長につなげるのか。それは自身のキャリアだけでなく、将来のソフトボール界も占いかねない。(井上翔太)