飲食店はがゆい認証制度 コロナ対策、利点見えず苦悩
新型コロナウイルス感染対策を講じる飲食店に秋田県がお墨付きを与える認証制度が始まってから2カ月近くが経ち、認証店舗数は70を超えた。県は認証のペースアップを図っているが、客足が戻らない店側からは「なんのための認証なのか分からない」との声が上がる。
認証制度は、飲食店での感染を防止し、客が安心して利用できるようにするのが狙いで、県の基準を満たしていれば認証書やステッカーを渡す。入店時の検温や手指消毒、間仕切りの設置など30項目がある。
県は5月31日から、申請のあった各店に職員が出向いて30項目を確認する作業を始めた。今月19日からは作業を民間に委託。19日現在で215店から申請があり、日程調整中などを除いて確認作業を終えたのは99店で、このうち75店が認証を受けた。県は今後作業のペースを上げ、年度内に2千店の認証をめざす。
ただ、飲食店からは認証のメリットを感じられないとの声が上がる。
秋田市の歓楽街「川反・大町地区」のバー「MixBar Big Tree」は、認証を受けてから2カ月近く経つが、店を営む砂川らんさんは「認証を見て来た客はいない」と話す。認証を受ける前と変わらず店は苦境で、1日に1、2組の客が来てくれればいい方だ。「なんのための認証なのか分からない」
認証申請と同時に申し込むよう県が勧める補助制度についても、現場を理解していないと砂川さんは指摘する。
仕切り板や手指消毒設備など、認証を得るために購入した感染対策グッズの費用は、1店舗あたり30万円を上限に県が補助金を出すことになっているが、対象となるのは今年4月1日以降に購入したもののみ。認証制度に先んじて対策を取っていても、その費用には補助が出ない仕組みだ。
砂川さんの店では、4月より前に対策経費約60万円を自費でまかなった。県内でコロナの感染が確認されてから1年以上が経つのに、こうした対策費を補助しないのはおかしいと、砂川さんは言う。「まじめにやっているほどバカを見るっていうのが、正直なところです」
認証店舗について積極的に広報される機会は現時点ではなく、制度についてまとめたホームページからPDFの一覧表を見ない限り、どの店が認証を得ているか客が知ることはできない。県の担当者は「確かにいまはメリットを感じづらいと思う。8月半ばくらいには認証店の広告を出したり、ホームページをグレードアップして店を紹介したりしたいと考えている」と話している。(高橋杏璃)
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