看護師とボクサーの両立 五輪開会式に出演した私の葛藤

有料記事ボクシング

聞き手・塩谷耕吾
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津端ありささん

 私はボクサーで、看護師です。

 女子ミドル級の日本代表として、勝ち上がれば東京五輪出場権を得られる世界最終予選に臨もうとしていました。大会は今年6月の予定でした。

 しかし今年2月、新型コロナウイルス拡大の影響で大会は中止に。世界ランク上位者に与えられることになった出場権を、私は得ることができませんでした。

 夢はついえました。

 看護学校に通い、2015年から埼玉県内の総合病院で働いてきました。ボクシングを始めたのは3年前。ダイエットのためでしたが、日本代表に選ばれ、海外遠征にも臨みました。

 私が五輪を目指していたとき、病院のみんなは応援してくれました。コロナの影響で東京大会が1年延期となったときのことです。患者が増えると定時で帰れないことも多い仕事ですが、私の練習時間を気にしてくれて、「帰っていいよ」と言ってくれることもありました。

 ただ、医療機関はどこも負荷がかかっています。

 私たちの病院は、コロナ患者の受け入れこそありませんでしたが、コロナ患者を受け入れた別の病院の患者さんを引き受けました。自分も、普段診ていない病気の患者さんを診ることが増えました。

 消耗してやめていく看護師は、私の周りに何人かいました。人が減ると残った人の負担が大きくなるから、「すみません」と謝ってやめていく。みんな状況は分かっているから、しょうがないよね、と。

 看護学校の同期の友達でコロナ病棟で働いている子もいます。

 「ずっとあなたがボクシングをがんばっている姿をみているから五輪をやってほしい気持ちはあるけど……。五輪のせいで感染は広がってほしくない」と言っていました。

 その後も感染収束の兆しは見えません。五輪開催への懐疑的な意見が増えています。

津端さんは23日午後8時から始まった東京オリンピックの開会式に出演しました。心の葛藤、そして表現したかったこととは。

 もし、私がボクシングをやっ…

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    磯野真穂
    (人類学者=文化人類学・医療人類学)
    2021年7月24日9時36分 投稿
    【視点】

    >打ち合わせで、コロナをなかったことにして開催を強行突破しようとしているのではなく、コロナで1年延期したからこその表現だと感じました。私もリスクのある中で働いてきた身としては、いい演出だなと純粋に感じました。医療従事者の方にも、同じように届