東京五輪、開会式は全9章「多様性に重点」 プログラム変更はなし
東京・国立競技場を舞台に無観客で行われた東京オリンピック(五輪)の開会式は全9章の構成となった。演出の全体調整をしていた小林賢太郎さんはホロコーストを揶揄(やゆ)する表現を過去にしていたとして前日に解任されたが、大会組織委員会は「小林さん一人で演出を手がけた部分はなかった」としてプログラムは変更されなかった。
式典責任者の日置貴之氏は「多様性を認め合う『ダイバーシティー&インクルージョン』、スポーツが持つ本質的な価値。そこに重点を置いた」と言う。
オープニングとなる第1章では、2013年の招致成功から史上初の1年延期までの8年を映像で振り返った。使われた楽曲は、直前で過去のいじめ問題が明るみに出て辞任した小山田圭吾さんに代わり田中知之さんが作曲した。694発の花火が明治神宮外苑の夜空を彩った。
第2章のテーマは「離れているけど、一人じゃない」。コロナ下で看護師をしながら、ボクサーとして東京五輪出場を目指した津端ありささんが孤独と向き合いながら闘ってきた1年余りの日々を、ダンサーたちの舞とともに表現した。
第3章では、天皇陛下と国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が競技場に姿を見せた。8人の子どもたちと医療従事者、1964年東京五輪で日本の金メダル第1号となった三宅義信さん、マラソン金メダリストの高橋尚子さんらが日本国旗をフィールドへ運び、歌手のMISIAさんが国歌を独唱した。
第4章では、64年東京五輪からのレガシー(遺産)を表現した。江戸消防記念会による伝統的な歌唱にタップダンスなどを加えた群舞では、64年五輪で各国・地域の選手団が持ち寄った種から育てた木で作った五輪マークが披露された。
第5章は、大会の主役であるアスリートの入場行進となった。オーケストラが演奏するゲーム「ドラゴンクエスト」のテーマ曲などに合わせて、205の国・地域と難民選手団選手たちが入場行進。先頭はギリシャ。漫画のふきだしをモチーフにした各国のプラカードが掲げられ、日本のゲームや漫画文化もあわせて紹介される形になった。日本選手団は206番目に入場した。
選手宣誓は日本選手団主将の山県亮太と副主将の石川佳純らが務めた。白紙撤回を経て、野老朝雄さんがデザインした「市松模様」が、1824台のドローンによって空中で表現された。
入場行進は、新型コロナウイルスの感染対策として互いに2メートルの距離をとったため過去大会よりも長い約2時間に及んだ。
第6章では大会組織委員会の橋本聖子会長と、IOCのバッハ会長があいさつ。橋本会長は「困難な中でも決して立ち止まることなく、前を向いて努力を続ける姿に、私たちは励まされ今があります」と選手たちに語り、感極まる場面も。東京と福島の高校生による合唱にのって、平和を願う紙製のハトが舞った。64年大会では本物のハトだったが、88年ソウル五輪でハトが聖火に巻き込まれた事故をきっかけにハトの使用は禁じられている。
競技開始を告げる第7章では、一目でスポーツがわかる「ピクトグラム」の歴史を映像で紹介。パントマイムアーティスト・が~まるちょばさんらが全50種目のピクトグラムをダンスで表現した。
第8章として開催都市・東京の競技会場や観光名所の紹介。歌舞伎役者の市川海老蔵さんとピアニストの上原ひろみさんが、世界の厄災が鎮まるように願いを込めてパフォーマンスした。
クライマックスの第9章は聖火台への点火式。昨年3月にギリシャで採火された聖火は1年の時を経て、今年3月に福島・Jヴィレッジから聖火リレーがスタート。競技場内では、プロ野球選手として活躍した長嶋茂雄さんや王貞治さん、松井秀喜さんらが聖火をつないだ。最後は、今大会に出場する女子テニスの大坂なおみが、太陽をモチーフにした球体デザインの聖火台に火をともした。(野村周平)