先発負傷で好救援 延長十二回に悪夢が…マウンド動けず

抜井規泰
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(23日、高校野球東東京大会 芝11-10目黒日大)

 サヨナラ勝ちにわく相手選手が整列を終えても、目黒日大の白拍子想一朗(3年)は呆然(ぼうぜん)とマウンドに立ち尽くしていた。

 予定のなかった背番号10の白拍子の登板は、チームを襲ったアクシデントがきっかけだった。4点リードの四回裏。エース落合悠太(同)の腰に打球が直撃。治療後に再びマウンドに立ったが、4失点で追いつかれた。白拍子が急きょ、マウンドを背負った。

 見事な救援だった。立ち上がりの五回こそ1点を失ったが、六回~延長十回は無安打に抑えた。この熱投に味方がこたえた。

 果実などを搾る「スクイーズ」から生まれた野球用語「スクイズ」。延長十二回、目黒日大はまさに1得点を搾り出した。だが、直後に悪夢が待っていた。

 「突然でした」。白拍子は試合後、嗚咽(おえつ)しながらそう語った。球が上ずりストライクが入らない。同点に追いつかれた。何とか2死までこぎつけたが、ここまでだった。サヨナラの打球が左翼に抜けた。マウンドに崩れ落ちた。「僕の責任で……」。試合後、震える声で、そう語った。

 夏の選手権は全国制覇する1校以外、全てのチームが敗れ去る。ただし、負けるのは1度だけ。大多数の球児たちは、高校3年の夏の敗戦とともに硬式野球、あるいは野球競技そのものを卒業する。換言すれば、彼らは高校3年の夏の1敗のために、幼い頃から白球を追いかけている。

 白拍子には、その1敗がこのサヨナラだった。「さあ、いこう。みんな待ってる」。木川卓見監督が肩を叩(たた)くと、再び泣き崩れた。=ネッツ多摩昭島(抜井規泰)