病気になった前監督の教えで4安打 熊本工を追い詰めた

屋代良樹
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(23日 高校野球熊本大会準々決勝 八代工5-6熊本工)

 八代工の中田雄大(3年)は緊張をほぐすように、肩を大きく回した。同点で迎えた延長十回、2死一、二塁で打席に立った。

 ここまで3長短打を放ち、得点に絡んでいた。「今日の俺は強い。いつも通りに打てば勝てる」。自分を鼓舞した。この回でリードし、逃げ切りたい。

 「力を入れるのは打つ瞬間だけ」。岡本政輝・前監督の言葉を思い返していた。3球目の直球にバットを振った。内野安打となり、二塁走者が送球の間に一気にホームへ滑り込んだ。チーム全体が歓喜した。

 安定感のある打撃を見込まれ、2019年の夏の大会に1年生で出場。だが昨冬はスランプに陥った。練習試合でバットを全力で振っても芯にあたらない。フォームが崩れることもあった。

 「バットを振る前に力んでしまっている。力を入れるのは打つ瞬間だけにしろ」。当時の岡本監督に助言された。感覚を体にすり込ませるために、1人でバットを振り続けた。打撃の調子は戻っていった。岡本監督は今年5月に脳梗塞(こうそく)で入院し、戦列を離れた。チームは感謝の思いを胸に大会に臨んだ。

 あと一歩だった。再び同点とされ、十一回には相手の連打を止められなかった。チームの夏は幕切れを迎えた。

 退院した岡本前監督は球場で見守っていた。「どうだった。悔いはないか」。声をかけられた中田は「悔いはありません」とすがすがしい顔で答えた。(屋代良樹)