トランスジェンダーのトイレ制限、日米の判決から考える

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 トランスジェンダーの人が自認する性別のトイレの使用を禁じることは、「差別」にあたるか――。米国バージニア州に住むトランスジェンダーの生徒が男子トイレを使わせて欲しいと求めたのに、これを禁じた地元の教育委員会の対応が争われた裁判で、米連邦最高裁は先月、「差別にあたり違法」とした連邦控訴裁の判断を支持し、原告勝訴が確定した。日本でも、トランスジェンダーの経産省職員に対する女性トイレの使用制限をめぐる裁判があり、一審は「違法」としたが、二審は「合法」と判断を覆し、結論は最高裁に委ねられた。アメリカと日本の判決から何を読み取るべきだろうか。(ニューヨーク=中井大助、編集委員・豊秀一

少数の人権か 多数派の不安か

 今年6月、米国で、約6年越しの訴訟に決着がついた。トランスジェンダーの男子生徒に対し、男子トイレの使用を禁じた教育委員会の決定を違法と認める判決(https://www.ca4.uscourts.gov/opinions/191952.P.pdf別ウインドウで開きます)が連邦最高裁で確定した。トランスジェンダーの権利をめぐる、重要な判断として注目されている。

 この訴訟は、バージニア州グルーチェスター郡の高校に通っていたギャビン・グリムさん(22)が起こした。女性として生まれたグリムさんは15歳のころから男性として生きるようになり、学校でも男子トイレの使用が認められた。しかし、他の生徒の保護者からクレームがあり、郡教育委員会は2014年12月、「生物学的ジェンダー」のトイレか、新たに設けられた両性用トイレの使用を義務づける規定を決定した。

 裁判記録によると、決定の過…

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