部員ゼロから全国へ 木製バットで鍛えた女子選手がHR

高橋健人
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 (24日、全国高校女子硬式野球選手権大会1回戦 兵庫・蒼開5―3福岡・折尾愛真)

 甲子園へとつながるもう一つの戦い。その幕開けを告げる打球は、中堅深くへと飛んでいった。

 一回表、蒼開の1番打者・日野口加奈が左打席に立つ。3球目を振り抜いた。打球は中堅手の頭上を越え、フェンスへ転々と転がっていく。一気に三つの塁を蹴り、ランニング本塁打とした。

 大喜びのベンチに迎えられ、「勢いをつけられた。いける(勝てる)んじゃないかと思った」。

 淡路島にある私立高校だ。柳学園から改称した2018年、強化指定クラブとして女子野球部を創設した。

 しかし部員がいない。大阪体育大などでプレーしてきた井手麻由佳監督(25)が全国の部員集めに奔走。翌19年春に最初の部員となったのが、日野口ら現在の3年生4人だ。

 19年夏の全国高校選手権は連合チームに加わって出た。翌20年は新型コロナウイルスの感染拡大により大会が中止になった。

 「思い描いた野球生活ではなかった」(日野口)が、練習は怠らなかった。

 「木製バットで練習すれば、金属製バットで打ったときに打球は10メートル伸びる」

 そんなトレーナーの助言を信じ、この2年半、木製バットを振り続けた。

 「大会第1号」の本塁打はその成果だ。

 1点リードの四回1死満塁では、6番の市野あいが右中間へ走者一掃の三塁打を放ち、貴重な追加点を奪った。「きょうのように全員で1勝を積み重ねていきたい」と日野口。

 堂々の大会初勝利だ。(高橋健人)

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