女性議員の育成「戦略や組織足りない」 自民・鈴木氏

聞き手・中田絢子
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 なぜ政治の世界に女性が必要なのか。2児の母であり、自民党の女性局局長代理も務める鈴木貴子衆院議員(35)に聞いた。

 ――2017年に第1子を出産。妊娠を公表した際にはいわれのない批判を受けました。

 妊娠8カ月のとき、「切迫早産」と診断されました。絶対安静が必要で、地元・北海道との往復ができない。そこで初めてブログで妊娠を公表したのです。すると、祝福や励ましの中に、「職務放棄だ」「だから女性議員はあてにならない」などという批判が寄せられました。それは極端な反応でしたが、一方で、「アンチ」ではない人からも「次の衆院選には出ないんだろうな」と言われているとも耳にしました。そのことに、さーっと血の気が引いたのを覚えています。

 ――その時点まで妊娠を公表していなかったのですよね。

 第1子だったため、あらゆることに非常に慎重になっていました。公表後に流産してしまった場合、自分自身としても立ち直れない、という気持ちもありました。妊娠を発表したらさまざまな行事に声がかかりづらくなるのではないか。周囲に気をつかわせてしまうのではないかという懸念もありました。今となれば母体と子どものことを第一に考えるべきだったと思いますが、当時はなかなか言い出せませんでした。

 ――批判に対してブログで反論したのは、どんな思いからですか。

 自分がこういう経験をしたということは、世の中の女性たちはもっとしんどい思いをしているのではないか、と思ったからです。そして、女性の多くは公に問題提起することも難しいじゃないですか。だから、「妊娠することが、責任や立場を放棄することだという考えには承服しかねます」とブログにつづりました。

 女性都議が議会で「産めないのか」というセクハラヤジを飛ばされ、社会問題になった際に感じた違和感を思いだしたこともあります。当時、多くの女性議員が「実は自分もかつてこう言われた」という経験を語るのを見聞きしました。しかし、私たちは政治家です。立法府の一員として、議員立法も可能だし、メディアなどで発信もできますよね。だから政治家として、「つらかった」というだけで終わっていいのだろうかと思っていました。

 ――この「マタハラ」の経験から国会でどのような活動を行ったのですか。

 翌年、衆議院改革を目指す超党派の議員連盟に参加しました。女性の国会議員が妊娠、出産時でも議決権を行使できるように改革してほしいと思ったからです。議連の会合に出席し、配られた提言の原案を見てみたら、案の定、そういう項目はありませんでした。手を挙げて、「女性議員が妊娠、出産時でも議決権を行使できるような対策を加えられないでしょうか」と提案し、代理投票制度や遠隔投票などの導入を議論することを提言の柱の一つにしてもらった。

 その場にいた人は9割が男性でしたが、異論はなく、むしろ「ぜひ盛り込もう」と前向きになってくれました。

 ――ただ、衆院や党の幹部らに提言を提出したものの、その後、実現には至っていない。なぜだと思いますか。

 提言を渡した党幹部の1人からは、憲法に国会議員の「出席」という文言があることを理由に「出来ない」と言われてしまいました。ですが、ただ「無理」で終わらせるのではなく、例えば国会の議会運営委員会などの公式な場で、有識者を呼ぶなどして深い議論をしてほしかったです。憲法が制定された当時は、インターネットがないわけで、「遠隔でも意思を表示できる」ということは想定されていません。私たち国会議員は、主権者たる国民の公益のために働いています。やはり時代の要請として、その働き方に対しては、不断の議論が必要ではないでしょうか。それなのに、この「議決」の部分に関しては提言には盛り込まれたものの、具体的な反応、動きに関して表立ったものがないことは残念です。

 ――具体策を進める上で何が壁なのでしょうか。

 女性政治家の育成を本気で進めるための戦略や組織が足りないと思います。

 議連や党の委員会など個別の活動はありますが、対策を一手に引き受け、戦略的に進める公的な組織がないと思います。女性局が女性候補者の育成コースを立ち上げましたが、本気で女性政治家を育成するのであれば「出口」である選挙にまで責任を持つべきだと思っています。そう考えると、女性局ではなく、(候補者調整を担う)選挙対策委員長のもとに置くべきだと党の会合でも発言しました。

 現状では、「国会議員になりたい」と言われても正直、簡単には迎え入れられないです。自民党は与党であり、すでに多くの選挙区に現職がいます。新たに女性候補者を育てても選挙区を割り当てて立候補させるのは容易ではないのです。国会議員として継続的に活動していけるよう、責任を持って送り出さないと、集まった女性候補たちが「道具」になって終わってしまうと懸念しています。

 ――比例代表に一定数女性候補を割り当てる「クオータ制」には賛成ですか。

 非常に悩ましい問題で、簡単には賛成と言えません。今年あった二階俊博幹事長との意見交換会でも発言しましたが、議会に女性を増やさなければいけない理由は、女性に女性のための仕事をしてもらうことだけが目的ではないと思っています。女性が増えることによって多様性が生まれ、議論の幅が広がることが期待できる。結果として、あまねく全ての人の利益につながることがその理由だと思います。ただ、その考えを突き詰めていくと、「女性」という属性だけに枠を割り当てることが果たして正解なのかと悩んでしまいます。

 悲しいかな、3期8年がすぎても私はいまだに衆議院の最年少。「若い」ということも政治の場ではマイノリティーなのです。そういうことを考えると、例えば若手枠という考え方もあるだろうし、ベテランやLGBTQ性的少数者)、障害がある人の代表など、さまざまな属性があり得ますよね。議会の多様性を確保するためには、「男と女」の二つの属性だけを考えていていいのか。そういう問いに対してまだ自分の中で答えが見つかっていないのです。

 ――ただ、「女性」という属性が意思決定の場で少数派なのは間違いない。

 ですから女性を増やすことには賛成です。意思決定の場に女の人を「はじめとする」多様な人々を参画させるべきだと考えています。ただ女性だけを増やせばいいということではなく、多様性を担保するための方策についても考えていきたいと思います。

     ◇

 鈴木貴子衆院議員 1986年生まれ、北海道帯広市出身。比例北海道ブロックで2013年に初当選し、現在は当選3回。元防衛政務官などを経て現在は党副幹事長。父は鈴木宗男参院議員。(聞き手・中田絢子