「もう無理です」から6年 大橋悠依、体質改善から始まった金ロード

競泳

照屋健
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 東京五輪の競泳女子400メートル個人メドレーで、初出場の大橋悠依(25)が日本の競泳陣初となる金メダルを獲得した。

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 「自分の可能性を信じて」

 2018年4月、企画で色紙に子どもたちへのメッセージを書いてもらうと、大橋は悩みながらこの言葉を書いた。

 「自分自身、大学に入るまでこんな強い選手になれるなんて、思ってもいなかった。でも、速くなりたいと思ったら、だんだんと(強い選手像に)近づいていった。自分次第だなって」

 東洋大2年だった2015年。記録が全く伸びなくなった。「もう無理です。やめます」。同大の平井伯昌監督に直訴した。

 平井監督から「記録が出ないとダメ、ではなくて、そういう自分の弱い部分をまず、見直さなきゃいけないんじゃないか」と諭されたが、すぐには受け入れられなかった。

 「仲間と一緒にいるのもつらいというか、それくらい自分に自信がなかった」

 その年の日本選手権200メートル個人メドレーは、エントリーした40人中最下位で予選敗退。中学生にも負けた。

 泳いでも泳いでも記録が出ない「暗黒期」。スタートしたばかりなのに、400メートルを泳いだ終盤のような疲れが襲ってくる。うまく泳げず、もどかしさを感じた。チームメートから「気持ちの問題だ」と言われても、聞く耳を持てず、反発した。気がつけば、いつも1人で帰るように。下を向きすぎて、首の後ろが痛くなった。

 平井監督から「寮で仲間と一緒に見て、少しは笑ったほうがいい」とコメディー映画のDVDを手渡されたこともある。「自分のダメな部分ばかり探して、ネガティブになっていた」

 後に、地元の病院の血液検査で極度の貧血と判明した。少しずつ、気持ちの持ち方を変えていった。「ダメな自分も受け入れるというか、それでもがんばろうと思えるようになった」。アサリを多くとるなど体質を改善し、大学4年間で自己ベストを14秒近く伸ばした。

 17年、19年の世界選手権でメダルを獲得。「東京五輪で、メダルをとる」と口にしてきた。時間をかけて、遠回りして、自分を信じ続けた結果、手にした金メダルだ。(照屋健)