じいちゃんは厳しい監督 呉の捕手「一緒に甲子園へ」
松尾葉奈
(24日、高校野球広島大会 呉2-0呉港)
呉の五回の守備。2死で走者は一、二塁。「やれ!」。ベンチにいる「じいちゃん」から指示が飛んだ。呉の捕手中村爽太郎君(2年)は、中村信彦監督(66)の顔をしっかり見てうなずいた。
「いけるぞ」。中村君に合図された投手が一塁に牽制(けんせい)球を投げてタッチアウト。この回を無失点に抑えた。勢いに乗ったチームは六回に2点先制した。
追い込まれてから強いのが、「市呉(いちくれ)野球」。気持ちが焦るときは、じいちゃんの顔を見て「いつも通り」と安心する。時間をかけた牽制の練習が生きた瞬間だった。
孫と祖父。選手と監督。球場では無意識に気持ちが切り替わる。練習や試合になると厳しい指導者だが、家では怒ったところを見たことがない。
「じいちゃんにとっても初の夏の甲子園に、一緒に行きたい」。8強入りで、二人の夢に一歩近づいた。(松尾葉奈)