練習中、突然いなくなった主将 気づいた仲間の存在

山崎琢也
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(24日、高校野球静岡大会準々決勝 磐田東5-2藤枝明誠)

 3点差を付けられた九回表2死、打席に藤枝明誠の4番・川瀬譲二主将が立った。凡退すれば試合が終わる場面、2ストライク1ボールと追い込まれた所で打席を外し、バットを頭に当てて深く深呼吸した。

 浮かんだのは共に戦ってきた仲間の顔。「あいつらの夏を俺が終わらせられない」と奮い立った。フルカウントからはじき返した打球は右翼手の前で弾んだ。

 昨年夏、新型コロナウイルスの影響で選手権大会は中止に。「必ず甲子園にいくだろう」と思っていた先輩たちは、目指す舞台に挑戦すらできないまま、夏を終えた。

 「お前たちは絶対に甲子園に行ってくれ」。夢を託され主将になったが、当初はうまくいかなかった。

 一つ上の先輩たちは理想のチームであり、あこがれでもあった。今までは先輩たちの言うとおりに練習すればよかったが、居なくなった途端、何をすればいいのかわからなくなった。そのまま秋の地区大会に突入。県大会出場こそつかんだものの地区大会では8強に終わった。

 自分は主将としてふさわしいのか、悩みつづけていたある日、ウォーミングアップを終えた後、グラウンドに戻れなくなった。路地裏を歩きながら考え続けていると、自分を探していた村松杏都・前主将に声を掛けられた。

 突然いなくなった主将を心配して2年生と3年生が探してくれていた。そのとき、改めて気づいた。「自分には仲間がいる」。悩みは吹っ切れた。「チームを勝ちに導けるような主将になる」

 秋春の県王者として迎えた夏は8強で幕を閉じた。敗退が決まった後も、号泣する仲間を慰め、「最後までしっかりやろう」と声を掛け続けた。

 「もっとこのチームで野球をしたかった」。試合後、涙はなかった。

 「僕たちが達成できなかった甲子園の夢は後輩たちに託します」(山崎琢也)