右手にテープ、一塁コーチの主将 仲間の生還で上げた拳

黒田陸離
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(24日、高校野球神奈川大会準々決勝 横浜11-3向上)

 10点を追う六回裏、向上に得点が入らなければコールドになる場面だった。

 無死二塁で繰り出したバントが横浜の失策を誘った。投手の三塁への送球が左翼線へ転がる間、一塁コーチスボックスの赤嶺大翔主将(3年)は両腕を回し続けた。二塁走者に続き、打者走者も三塁を蹴るとさらに大きく回す。「頼むからもう1点取ってくれ!」。2人目も本塁へ滑り込んで生還。赤嶺主将は、テープを巻いた右拳を高々と上げた。

 初の甲子園をめざし部員115人をまとめてきた。冬の3カ月にはスイング10万本をそれぞれのノルマとし、主力の赤嶺主将もそれ以上、振り込んだ。次第に右手をかえすときにしびれが出て、春季大会前には箸も持てなくなった。

 疲労で有鉤骨(ゆうこうこつ)が折れていた。包帯で固定した右手を見て、何も考えられなくなった。練習すらできない時間が数カ月続き、今大会に入っても思いっきりバットは振れなかった。

 そんな主将を仲間が励ましてくれた。「キャプテンはケガをしているけれど、よく見て指示してくれている」。そんな声に「プレーできなくてもチームに貢献できるはず」。一塁コーチや伝令として仲間を鼓舞し続けた。

 七回裏、チームは振り込みの成果を出し、意地の4連打。1死満塁から併殺でコールド負けが決まったが「最後は自分たちの力を見せられた」。涙が止まらない仲間の肩に「ありがとう」とそっと右手を添えた。(黒田陸離)