優勝の瞬間、球場に入れぬ家族を思った 日大山形の4番

福岡龍一郎
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(24日、高校野球山形大会 日大山形9-7東海大山形)

 優勝の瞬間、球場の駐車場にいる家族を思った。

 二回裏、2死満塁のチャンス。打席に立った日大山形の伊藤翔海(しょうま)君(3年)は、4球目の直球を振り抜いた。打球は右方向に抜け、走者2人をかえす二塁打に。「うおー!」。二塁上でマッスルポーズをつくり、雄たけびを上げた。仲間がつないだ打席を、仲間につなぐ。4番打者として目指してきたことだ。

 今春から4番に定着。「冬はチーム一、山形一バットを振った自信がある」。雪の中、1日1千本を振ったこともあった。伊藤君は東京出身。父の航さん(43)は同校野球部OB。「お父さんみたいになりたい」と、日大山形を選んだ。野球がうまくて優しい、今も自慢の父だ。

 寮暮らしで、泥まみれの練習着は自分で洗う。部屋は、筋トレグッズですぐ散らかってしまう。家族のありがたさを思い知った。野球を続けさせてくれた両親への恩返しは、試合で自分の活躍を見せること。だから練習も人一倍頑張れた。

 翔海君は決勝で5打数4安打とチーム一の活躍。しかし、コロナ禍に邪魔された。航さんら家族は、球場外からの応援を余儀なくされたのだ。東京などから来ていたため、感染対策の入場制限があったためだ。航さんらは、スマホの試合速報を頼りに、球場のどよめきからプレーする翔海君の姿を想像する。初戦から、そんな応援を続けていた。

 「今は難しいけれど、甲子園だったらプレーを見せてあげられるかも」。翔海君にはこの夏、甲子園を目指す理由がひとつ増えた。そして、夢はかなった。

 航さんは昔、甲子園でベンチ入りしたものの、プレーの機会はなかった。「甲子園でプレーを見せられたら、喜んでくれるかな」。翔海君は、はにかんだ。(福岡龍一郎)