たばねた髪を振り乱し疾走 異色のハードラー・黒川和樹にかかる期待

陸上

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 黒縁のめがねをかけ、ヘアバンドでたばねた髪を振り乱しながら疾走する。男子400メートル障害の黒川和樹(法大2年)はそんなスタイルが特徴のハードラーだ。この種目でのオリンピック(五輪)の決勝進出は、世界選手権で2度銅メダルを獲得した為末大ですらなしえなかった。伸び盛りの20歳は東京五輪で日本勢初の快挙を目指す。

 「コンタクトレンズが合わないわけじゃないけれど、ずっとめがね。めがねが落ち着くんです。ヘアバンドはめがねが落ちないようにするためです」

 黒川は自分のスタイルを説明する。

 山口・下関市出身。陸上は中学からはじめ、最初は走り高跳びの選手だった。山口・田部高3年の全国総体では110メートル障害で5位、400メートル障害で3位とダブル入賞を果たした。

 高校時代の黒川を見た苅部俊二・法大監督は「すごい選手を見つけた、と思いました。とにかくバネが良かった。この子を日本代表選手にしなかったら私の責任だと感じた」と振り返る。「為末君も天才だったけれど、黒川君もまた天才です」

 400メートル障害は、日本勢の得意種目だ。ただ、五輪では1984年ロサンゼルス大会の吉田良一、2004年アテネ大会の為末の準決勝進出が最高で、決勝に進んだ選手はいない。

 そんな高い壁にも「オリンピックでの目標は入賞。準決勝で日本記録を出して決勝に進みたい」と、黒川ははっきり言う。為末が01年に出した47秒89の日本記録の更新についても常に「出せると思っている」と揺るぎない。

 20年間、多くの有力選手が為末の記録を目標にしてきたが、47秒台をマークした選手でさえ、為末のほかは、08年北京五輪代表の成迫健児だけだ。今年48秒台に突入したばかりで、自己ベストが48秒68の黒川が、自信をもって日本記録更新を口にするのは、彼なりの理由がある。

 スタートから飛ばせるだけ飛ばして行くのが、黒川のスタイルだ。今年6月の日本選手権を48秒69で初めて制した時、前半5台目までのタイムは、為末が日本記録を出した時のレースと同じだったという。

 「想定内です。がむしゃらに走れば出るタイムです。あとは後半の走りがかみ合えば、日本記録は出る、と思う」

 練習でも為末の日本記録を意識して取り組み、そのスピード感を体にしみこませている。

 6月の日本選手権は、初優勝だった。急成長に「自分でもびっくりしている。自分の成長に追いついていないところがあります」という。

 実は、日本代表として海外選手と戦う初めての舞台が五輪となる。

 「スタートラインについたらがちがちに緊張すると思う。でも、楽しみでもあります」