コロナ下で23日に開幕した東京五輪。演出を担うクリエーターが直前に辞任、解任となり、無観客の中で行われた異例の開会式をどう見たか。音楽、映画、演劇、文学と幅広く批評する佐々木敦さんに聞いた。
――開会式をご覧になって、率直な感想を聞かせてください。
開会式のクリエーターのラインアップが発表された時に、1990年代から2000年代初頭ぐらいに活躍した人の名前が多く見られたので、なんらかの意味で「90年代感」のある演出になるのではないかと予想しました。結局は辞めた人になるんですが、演出全体の調整を担う小林賢太郎さんしかり、音楽を担当する小山田圭吾さんしかり。それに音楽監督の田中知之さんもそうですよね。
その頃にノスタルジーがある、現在40代ぐらいの人たちが選定になんらかの形でコミットしている、あるいは一番最初に声をかけられた人たちの中にいるということなのかなと思ったんです。その意味で、「90年代的なるもの」がどんな風に露出してくるのかということが気になっていた。でも、違う意味での「90年代的なるもの」への注目がなされてしまい、特に小山田さんの問題では、悪(あ)しき「90年代性」が取り沙汰されることにもなった。その結果、小山田さんの問題も含めた複数のトラブルを経て無理やりに敢行された開会式がどのようなものであるかという視点でしか見られなかったということがまず前提としてあります。虚心で見られない、と言いますか。
最も引っかかったのは、総合…
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