不妊治療も自然な選択 周囲が振りかざす社会通念に疑問

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浜之上はるか
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 今回は、最近の不妊治療の動きについて少し考えてみようと思います。

来年度から保険適用

 昨年9月、菅内閣は基本方針で、「不妊治療への保険適用を実現する」と明記しました。2022年4月からの保険適用をめざし、国において検討が続いています。少子化が進み不妊治療世代も減り始めていましたが、不妊治療には改めてさまざまな方面から期待が集まっていくでしょう。

 不妊治療の進歩は本当にめざましいです。技術革新ももちろんですが、着床前検査、子宮移植、妊孕(にんよう)性温存、第三者からの提供配偶子などは、多様な性や絶対的不妊も対象としており、あらゆる方面のハードルも乗り越えようとしています。

 生殖医療の中でのゲノム編集技術は、もちろん現状で全世界的に認められていません。ただ、ミトコンドリア病における核置換などはそう遠くない将来、現実のものとなるのではという意見もあります。ミトコンドリアの持つ遺伝情報を次世代に持ち込ませないように、病気のある女性の受精卵または卵子から核(多くの遺伝情報はここに存在します)だけを取りだし、第三者の受精卵や卵子の核と入れ替えて用いる技術です。

 不妊治療は自然に授かるのとは確かに異なります。そのような技術を用いて子どもをもつことにあまり好感を持てない方もいるでしょう。

 私自身も20代の頃、「自然に授からない時にそこまでやるかなー?」と思ったこともありました。妊娠・出産にこだわらなくても、求めれば里親や養親など血縁を超えた親子のあり方があり、その方がかえって自然なのではないかと。

不妊治療を経て親子、自然なこと

 でも、今や、カップル6組のうち1組が不妊、また16人に1人の子が体外受精技術で出生しているという現状を知った時、身近な方が悩み、挑戦し、さまざまな形で幸せを手にしたことに実際に触れた時、子を授かるということはどんな形であっても、人の思いや愛情によってもたらされる祝福であり奇跡だと感じます。不妊治療を経て親子となることだって同様に自然なことなのです。

 物事の常識とか社会通念は変化するものであり、親子のあり方だって絶対的なものではありません。良いとか悪いとか線を引くことよりも、そういう新たな視点と、それを支える立場やその思いをきちんと知り、きちんと想像してみることが大切なのかなと思っています。

 たとえば、着床前検査(受精卵遺伝学的に評価すること)について考えてみます。

 昔は原因がよくわからなかった病気も、遺伝子の解析技術の進歩で原因が特定されるようになってきています。そうなると、次世代またはその次の子への影響がかえって気になるかもしれません。

 また、染色体の変化が明らかな受精卵は誰にでも頻繁に生じます。そういう受精卵は多くの場合妊娠に至らなかったり、流産したりします。出生すれば障害を持つかもしれません。

 現実に、受精卵の段階で特定の遺伝情報について評価する方法(PGT―M)や、染色体の量的なバランスを確認する方法(PGT―A)が、条件を満たすカップルに提案されるようになってきています。そのような不安や悩みを抱えたカップルが、着床前検査をいう技術があることを知った時、彼らはどのような思いを抱くのか。そして希望するのか、しないのか……。

 ただジャッジするのではなく、いろいろな考え方・捉え方を理解しようとする姿勢が求められるのかなと思うのです。

 不妊治療にも、さまざまなレ…

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浜之上はるか

浜之上はるか(はまのうえ・はるか)横浜市立大学附属病院遺伝子診療科講師

2000年東海大医学部卒。横浜労災病院産婦人科、横浜市立大学附属病院遺伝子診療部助教などを経て、18年から現職。産婦人科専門医・指導医、臨床遺伝専門医・指導責任医。日本遺伝カウンセリング学会の評議員・倫理問題検討委員を務める。