第1回軍靴で踏まれた息子の遺体 教員を解雇された母も闘う

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バンコク=福山亜希
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 路上に仰向けに倒れた息子の両手足を兵士たちがつかみ、乱暴に引きずっていく。兵士のひとりが、おもむろに息子の顔に警備用の盾をかぶせた。そして、その上から別の兵士が軍靴で思い切り踏みつけた。

 2月1日のクーデターで権力を握った国軍による弾圧で、900人を超える市民の犠牲が出ているミャンマー。第2の都市マンダレーで外科医をしていたティーハティントンさん(26)は3月27日、国軍への抗議デモの最中に銃撃され、亡くなった。

 母親のエエカインさん(52)は、近くにいた市民が撮影し、SNSで拡散した動画でひとり息子の死を確認した。遺体は国軍が持ち去り、今も返されていない。

 その日の朝、デモに出かける姿を見送ったのが最後になった。翌日になっても連絡が取れず、娘夫婦や息子の友人たちと、近くの刑務所に拘束されていないか探して回った。

 動画は、息子の友人が見つけた。SNSにはほかにも、血痕が残る路上に放置された片方だけの靴、イヤホン、ガスマスク、ヘルメットの写真が投稿され、ヘルメットには銃弾の跡もあった。どれも、息子が身につけていたものだ。

 兵士たちが、息子の体を軍車両の荷台に投げ入れる瞬間をとらえた写真もあった。

ミャンマーで国軍がクーデターを起こし、アウンサンスーチー氏らを拘束してから8月1日で半年になります。ミャンマーではいま、何が起きているのでしょうか。3回の連載でお伝えします。記事後半では、銃撃されたティーハティントンさんが遺書を残していたことが明らかになります。

 「あの日から涙も出ず、一度…

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連載きしむ国家 ミャンマー政変半年(全3回)

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