「量より質」の練習を コロナ下、工夫を凝らす吹奏楽部

八田智代、魚住ゆかり
【動画】コロナ禍の吹奏楽有名中学校は今=端場一浩撮影
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 全日本吹奏楽コンクール全日本吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)が10月、2年ぶりに開かれる。新型コロナウイルスの影響によるさまざまな制約の下、中学、高校の吹奏楽部員らは工夫を凝らして「量より質」の練習に励んでいる。大会を目指す2校を取材した。

インターネットでライブ配信

朝日新聞社は各地の吹奏楽連盟と協力して、全日本吹奏楽コンクールにつながる支部大会などを初めてインターネットでライブ配信(有料)します。

生駒市立生駒中 一人一人を見てあげる練習

 2年前の全国大会で金賞を獲得した奈良県生駒市立生駒中学校吹奏楽部は、力強い演奏が魅力の実力校だ。コロナ禍で練習時間が制限される中、少人数単位のきめ細かな練習を重ね、効果を上げている。

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打楽器セクションだけで顧問の先生から指導を受ける=6月20日、奈良県生駒市の市立生駒中学校

 隣接する大阪府緊急事態宣言延長を受け、市教育委員会は5月末から6月下旬、子どもたちの練習時間を平日は1時間半、土日はいずれかで2時間に制限した。

 平日は基礎練習や全体練習で時間が終わり、パート練習ができない。そこで考えたのが土日の2日間、午前9時~午後5時をフルに使って、2時間ずつ計8コマに分けて練習する作戦。最初の2時間は打楽器セクションの6人、別の2時間はコントラバスの3人などと53人の全部員を振り分けた。

 生徒の練習時間は上限に収まるが、指導者の負担は大きい。それでも顧問の山上隆弘教諭(58)は「すべての部員を丁寧に見てあげたい」。密を避けると同時に一人一人と向き合い、つまずいた部員には1対1で指導することも。細かなアドバイスが可能になった。

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密を避けて2、3年生だけで全体練習をする吹奏楽部の部員たち。左手前は顧問の山上隆弘教諭=6月20日、奈良県生駒市の市立生駒中学校

 部員も効果を感じている。横井慶さん(3年)は「全体練習ではできる人の音に隠れて見えなかった問題点が、見えるようになった」。大東こころさん(1年)は「先生の助言を持ち帰って家で練習すると、次の日の音が全然違う」。

 小グループで音を仕上げるため、合奏で培われる「相手を思い、つながる演奏」ができにくいなど克服すべき課題もあるというが、山上教諭は「コロナ後も一人一人を見てあげる練習は続けたい」と話した。

東京都立片倉高 「セーフティー係」が換気など呼びかけ

 新型コロナの感染拡大に伴う3回目の緊急事態宣言が解除された6月21日、東京都立片倉高校。放課後の校内に5階の視聴覚室から、力強く豊かなハーモニーが響き始めた。

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久しぶりの全体合奏。間隔をとり、吹いていない時はマスクを着用する=6月21日、東京都八王子市の都立片倉高校

 全日本吹奏楽コンクールに東京の高校としては最多の15回出場し、一昨年は6回目の金賞に輝いた。「全体合奏はすごく久しぶりです。前がいつか思い出せないくらい」と幹部の一人、須貝栞帆さん(3年)は笑った。

 多難な時期を乗り切るため部長はおかず、幹部5人が部員約60人を引っ張る。

 宣言中は分散登校。部活動も条件付きで許されたが、一日1~2時間、15分刻みの少人数練習が中心。練習の音を録音してインターネット上で共有し、全体の進み具合や課題を個々に確認して次の練習に生かした。「今年のバンドの音に慣れることができたし、発見もあった」。幹部の寺西史織さん(同)は話す。

 朝夕2回、ネットの会議アプリを使ったミーティングが、貴重な意見交換の場だ。

 感染症専門医らが作成したガイドライン「スクールバンドを中心とした吹奏楽活動における感染対策」を徹底する。印刷して常に持ち歩き、「セーフティー係」の10人が手洗いや換気、消毒を呼びかける。

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換気のため窓を開け放してパート練習=6月21日、東京都八王子市の都立片倉高校

 活動することに罪悪感すら覚えかねない状況の下、工夫を重ねて「ここまで練習できるんだという自信がついた」と須貝さん。今年は東京の代表枠が一つ減る。だがその自信を武器に課題曲Ⅲと「中国の不思議な役人」で狭き門に挑む。

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 朝日新聞社は各地の吹奏楽連盟と協力して、全日本吹奏楽コンクールにつながる支部大会などを初めてインターネットでライブ配信(有料)します。詳しくはこちら(https://www.asahi.com/corporate/info/14396828)で。(八田智代、魚住ゆかり)