武道館の観客席から拍手 でも家族は来られぬちぐはぐさ

柔道

伊木緑
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 柔道の阿部一二三選手が、妹の詩選手についで金メダルを決めた瞬間をテレビで見ていて、観客席にそれなりに人がいることに気づいた方もいるのではないだろうか。

 決戦会場となった日本武道館の場合、各国の選手団や競技団体などの関係者はもちろん、会場で働くボランティアや警備員、荷物検査を担当する自衛官らも、最上段の観客席でつかの間の休憩を過ごし、選手に拍手を送っている。

 温かな光景だと思う。選手もうれしいに違いない。

 だが、つい考えてしまう。兄妹の成長を見守り、2人の雄姿を誰よりも会場で見たかったであろう家族がここに来られなかったことを。

 両親と長兄は東京都内の自宅のテレビで2人の戦いを見届けた。これまで国内の大会はすべて会場に足を運び、誰よりも大きな声で応援してきた父浩二さんは「思いは届いていたと思う。ただ、現場で見られない寂しさはありました」

 新型コロナの感染者がますます増えるなか、無観客開催は賢明な判断だったと思う。だが、スタッフが観戦できるのなら、数人の家族の入場くらい許してあげられないものか。ちぐはぐさに胸を締め付けられる。伊木緑