八木かなえはバーベル挙げて笑顔 怖さと楽しさ「ああ、五輪だな」

ウエイトリフティング

金子智彦
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 26日に行われた東京オリンピック(五輪)重量挙げ女子55キロ級で、八木かなえ(29)は11位で3度目の五輪を終えた。年々、体の回復が遅くなり、けがにも苦しんだが、「3大会の中で一番楽しめた。感謝×100ぐらい」と笑った。

 スナッチ81キロ、ジャーク102キロは自己記録に遠く及ばない。それでも、近年はジャークで100キロを超えることすら難しかった。及第点の出来。バーベルをあげるごとに「かなえスマイル」がはじけた。

 1本目のスナッチを失敗し、思わず苦笑いを浮かべた。「これが怖さでもあり、楽しさ。ああ、五輪だなって感じた」

 「思い切りが足りない」と反省し、残り2本は成功した。ジャークでは2本目で102キロをあげると両こぶしをグッと握りしめた。

 「記録自体には悔いが残るけど、最近ではいい重量を取れた」。3本目は同じグループで競り合う選手を上回るために106キロを選択。失敗したが、「一つでもいい順位を」というアスリートの本能を見せた。

 高校から競技を始め、53キロ級で2012年ロンドン五輪12位、06年リオデジャネイロ五輪は6位入賞を果たした。苦悶(くもん)の表情とは無縁の楽しそうに、うれしそうにバーベルをあげる笑顔で、人気者になった。

 しかし、リオ五輪後に階級区分の変更があり、55キロ級に上げてからは苦難の連続だった。腰痛などに悩まされた。20代も後半になるにつれ、肩やひじの痛みも回復しにくくなった。

 さらにコロナ禍で五輪は1年延期となり、「張り詰めていた糸が切れてしまったというか……。この1年はなかなかつらいところでした」

 何とか気持ちを奮い立たせ、臨んだ東京の舞台。「やり切ったのかは分からない。でも、支えてくれた人たちに『ありがとうございました』」

 しばらくは体を休めたい。その後は「1年1年できるところまで。記録や結果に縛られず、楽しく競技ができたらいいな」。

 24日には5大会連続出場の35歳、三宅宏実が現役引退を表明した。八木も「パリ五輪は99%ない」と言った。日本女子の一時代の終幕を感じさせた。(金子智彦)