都心の広尾、練習は1時間制限 二松学舎大付に挑んだ

抜井規泰
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(26日、高校野球東東京大会5回戦 二松学舎大付7-0広尾)

 都心のど真ん中に立地する、都立の広尾。狭いグラウンドを野球部が使えるのは、火曜と金曜だけだ。加えて、コロナ禍で部活動は大幅に制限され、放課後は1時間の練習しか許されなかった。

 「この1年余り、ほとんど何もできない状況でした。それでも、やれるだけのことをやり、強豪相手にも戦えることを示したかった」。岩崎剛監督は試合後、涙目でそう語った。

 そんなチームの中心が、エースで4番の石黒和(3年)だ。打者の手元で伸びる140キロの直球を軸に、カットボールとスライダーを織り交ぜて相手打線を翻弄(ほんろう)。ここまでの3試合で、わずか1失点。被安打は計8本という好投で、5回戦進出を牽引(けんいん)した。

 迎えた二松学舎大付戦。少ない練習時間のほとんどを、岩崎監督は相手投手の速球対策に費やした。打撃マシンの球速を上げ、ひたすら打ち込んできた。

 成果は出せた。相手と互角の7安打。だが、8安打で7得点をたたき出した相手に対し、広尾は要所を締められ本塁が遠かった。主将の藤本琉生(3年)は「石黒を援護できなかった」と涙を流し続けた。

 その石黒は、思い切って打者の内角を突く攻めの投球を見せた。しかし――。

 「抑えなければと、力んでしまった」。二回に厳しく攻めた内角球で2死球を与え、一発を浴び、3点を失った。先制されたことでさらに力み、八回サヨナラコールドで散った。

 「抑えたかったけど……」とエースの石黒。主将の藤本は「石黒は踏ん張ってくれました。本当に……感謝しかなくて……」。最後は声にならなかった。

 昨秋の大会は1次予選で敗退。春季大会にも出場できなかった広尾は今大会前、特に注目されるチームではなかった。しかし、好投手の力投と、少ない練習時間を団結力で補い、5回戦まではい上がった。

 準々決勝の舞台は、遠かった。だが、2人が球場を出て仲間たちの輪に加わると、かけつけた応援団から大歓声が上がった。=都営駒沢(抜井規泰)